おすすめ文庫王国 2019 – 「キャラクター文芸」を知りました

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おすすめ文庫王国 2019 / 本の雑誌社 / 760円+税
表紙イラスト: 及川晴香 (青森県八戸市 木村書店) 表紙デザイン: 島田隆

及川晴香って誰? と思って調べると、POP で本屋を有名にされた方でした。素晴らしい採用ですね。あと猫の文庫王国いいなぁ。王さまも家来も一日中、読書に夢中らしい。

ベストテン

編集部の選ぶベスト3は、1位が中村計『勝ちすぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』、2位は霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』、3位は小野寺史宣『ホケツ!』。1位は高校野球を知らなくても面白い作品らしいですが、スポーツ物のノンフィクション自体読んだことない私には残念ながらふーん程度。杉江解説のため順位を下げた『ホケツ!』が1位で良かったのではないでしょうか?
ところで「おすすめ文庫王国」では、昨年も高校野球ものの須賀しのぶ『夏の祈りは』が1位。意外ですがスポーツ好きが多いのかも。

大森望のSFベストテンでは強い作品が並んだ中でもイーガン『シルトの梯子』がダントツ。物理学ネタの生煮え感が美味しそうです(褒めてます)。

タニグチリウイチは毎年、外部の読者にとってはカオスすぎて、萌系カバーと長いタイトルですべて同一に見えてしまうライトノベルを、「主観」と言いつつ手際よく分類した上で魅力たっぷりに紹介します。今年の1位は犬村小六『やがて恋するヴィヴィ・レイン』。このタイトルで、3000メートルの崖下と崖上の別世界を含む三世界統一の話らしいから驚きます。

ところで「キャラクター文芸」という言葉がこちらにも、文庫Bリーグにも出てきます。調べると、ラノベ風のキャラ立ちした主人公らが(等身大+特殊能力みたいなの)、現実世界を舞台に展開する作品の総称らしく、たとえば新潮文庫 nex の作品や「ビブリア古書堂の事件手帖」とかが当たるそうです。確かに書店の棚で増えている印象ですね。

読者のマイベストで面白そうだったのが田崎健太『真説・長州力』。プロレスの興行側の様子が紹介されて以来、そのトップにいた人たちの話は複雑で面白い。

読者の佐藤雅秀さんが「本の雑誌「三角窓口」では投稿者の年齢が上昇気味ではないか。」(p.11)と書いてますが、私も自分のことは棚に上げてそう思っています。編集部は意図的にでも若い人のハガキを採用すべし。たとえばコンピュータソフトウエアの専門誌「Software Design」は平均読者年齢が40代~50代だったのを、若返り企画を推進し、学習色を濃くしたことで、現在では20代~30代が中心とか。編集部は見習いたい。

エッセイ & 連載

エッセイ「はじめての文庫」では、柴崎友香、仁木英之、小路幸也が、各人のはじめのて文庫作品についての思い出を語ります。新装版だったり、文庫の置かれる棚だったり、文庫化された時の仕事の状況だったりと様々ですが、現在の作家活動の原点としての文庫が描かれるとても良いエッセイになっています。

毎回読み応えがある「文庫Bリーグ」。各文庫会社をJリーグに見立てて順位づけするものでコメントが一々面白い。一般読者には分からないバックヤード視点が野次馬的にいいです。
ただこれ可能なら「本の雑誌」でも毎月、こうしたニュース的な内容を取り上げて欲しい。たとえば早瀬耕『未必のマクベス』の仕掛け宣伝は私も三省堂書店で見かけましたが、そこまでヒットしたものとは思いませんでした。「黒い昼食会」もいいですが、三面記事的に売れている本や仕掛けの紹介も良いと思います。
しかし、高橋一生の帯って有効なんですね… > 『嘘を愛する女』。

山本貴光「学術文庫の1年」。ルーベンスタイン『中世の覚醒 アリストテレス再発見から知の革命へ』によるとアリストテレスは、中世のヨーロッパですっかり忘れ去られていて、アラブ人経由で再発見されたそうです。聞くだけでワクワクする話です。『文選 詩篇』は「本の雑誌」1月号でも林さかなが紹介していましたが、「学術の粋を集めた労作」感が伝わります。

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