エミレーツ航空に乗ったら、新海誠のファンになった

エミレーツ航空のアニメ枠が凄い

WordCamp EU の行き帰りで利用したエミレーツ航空 6月の「アニメーション映画」枠が素晴らしく、国際線にも関わらずジャパニメーション満載でした。しかも気になってた作品ばかりで、かつ観たことがあるのは「君の名は。」だけというラッキーさ。

でまぁ、いろいろ観た末に新海誠にハマりまくり、帰国後も1周間はたびたび思い出されて、ぼーっとしていました。

確かに「君の名は。」は無茶苦茶面白い作品でしたが、監督のファンになったとまでは言い切れませんでした。でも、今は完全なファンです。

「秒速5センチメートル」の揺さぶりは凄まじく、「言の葉の庭」はマイベスト映画に浮上し、「君の名は。」への気づきもいっぱい。新作が今から本当に楽しみですし、小説もこれから読みます。柄にもなく、1次情報、2次情報を追いかけたい気持ちでいっぱいです。この歳でここまで好きになる監督が見つかったことに本当に感謝です > エミレーツ航空

個別の感想はこちら。

そして長い振り返りが以下です。

機内で映画は観ない

飛行機の中での映画は、機内アナウンスで一時停止したり、エンジン音や飲み物の案内で邪魔されたりと好きではありません。近年はオンデマンドで好きなときに見始められますが、以前は一斉放映のため気がつけば途中で始まっており、最初から最後まで真剣に通してみたい派の私には、途中から見始めるなんて許すことができず、結果、飛行機の中で映画を見たことはありませんでした。

そういえば私の友人に、家で映画を見るときリモコンを手に持ち、分からない台詞があれば聞き返し、いいシーンがあればリピートし、見たいときには好きなシーンから始めて早送りでザッピングし、とまったく別の「何か」を見ているかのような人間がいます。そんな友人であればどこで一時停止しようと、どこから始まろうと気にはならないのでしょうね。

「繰り返し観ると感動が減るから」と、好きな「ライトスタッフ」や「未来世紀ブラジル」さえ、そうそう繰り返して観ない私は、見始めれば最初の映画会社のロゴから、最後のクレジットまで集中して観るという鑑賞スタイル。友人には「いちいち映画ごときで面倒くさいやつだ」と言われています。

で、エミレーツ航空。席には割りと大きな液晶画面が備え付けられ、最新作や過去の作品を自由にみることができます。まずは、この場でないと見ないであろう作品や過去に見た作品から見てみましたが、意外と楽しめるもんですね。うーん、やっぱり面倒くさいやつだったのか、私は。

往路「美女と野獣」がイマイチで残念。やはり機内は駄目か?

行きの飛行機で観た作品。

「美女と野獣」日本語吹き替え版
「美女と野獣」英語版の歌のところだけ
「君の名は。」
「Matrix」英語版 字幕なし

美女と野獣

アニメ版を劇場で観て泣いて、本作の、ガラスケースの中で落ちる薔薇の花びらの宣伝でもうるうるした作品。既に観た友人らの評判もよく、当然期待が高まります。

日本語字幕版がなかったため、当初は英語版を試みましたが、冒頭のナレーションからさっぱり分からず ;-( 泣く泣く日本語吹き替え版を見ました。

ら、やっぱり、歌は上手いんだろうけど歌詞の収まりがどうにも悪い。そして画面サイズが災いしたのか、あれほど圧巻と言われていた「Be a guest」や二人のダンスシーンも今ひとつ乗り切れませんでした。ダンスシーンの抑えた演出に監督の狙いを見たつもりですが、これも小さな画面で観た誤解だったかもしれません。

ポット夫人やルミエールの実写感もいまいちじゃないかなぁ…。ポット夫人はまさかの表面に絵を描いただけだし、ルミエールはよく分からないグロテスクさ、コグスワースに至ってはどこが実写なんだか分からない始末。ガストンの評価の高さ(「かっこいい ♥」)もピンと来なかった。まぁ、野獣はうまかったが。むぅ。

一応英語版も歌のシーンだけ拾い見したけど(あれほど友人を馬鹿にしていたのに!)、さほど感心しませんでした。残念。

君の名は。

続いて劇場で見た「君の名は。」をもう一度。

今回は最初ほどストーリーに振り回されず、絵の美しさやキャラの表情などを楽しみながら落ち着いて観ました。…が、気付けばやはりドキドキしており、夕暮れのシーンにはまた泣き、ラストにはニコニコしました。あー、三葉は笑いながら涙を流していたのですね、いい表情だなぁ、感動。

そして初見で感じた違和感の「正体」を改めて認識しました。

Matrix

「Matrix」英語版、日本語字幕無し。話の詳細は分からず、ただ画面を眺めていただけの印象ですが、これが実に 1999年を感じさせるマッシュアップ。ダン・シモンズの『ハイペリオン』を思い出しました。『ハイペリオン』は昔どこかで読んだことのある SF をパターン化して寄せ集めた傑作ですが、「Matrix」はそれを日本のアニメでやった感じ。カンフーだってハリウッドより日本が先に見つけています(よね?) 実に中2病的な演出で、当時知らずに観たらハマってたのかなとも思います。残念ながらその後のフォロワーが多すぎて、映像やストーリーに新鮮味が失せているのは仕方ないか。

結局、往路は「君の名は。」の素晴らしさを再認識しただけでした。

復路 新海誠の作品に打ちのめされる

帰りの飛行機も同じコンテンツでした。

それにしても驚くはエミレーツ航空。全世界で共通と思うのですが日本のアニメーションばかり、しかもジブリ作品は1本も含まない。何かの、あるいは誰かの主張を感じますね。次世代作家を見せたいという。

せっかくなので復路はアニメーションをまとめて観ることにしました。噂に名高い「この世界の片隅に」は視聴後、どよーんとしそうなので、別の名高い「時をかける少女」を最後にもってきて、最初は全然知らない、新海誠作品を年代順に配置して、こんな感じか。

「秒速5センチメートル」
「星を追う子ども」
「言の葉の庭」
「この世界の片隅に」
「時をかける少女」

この何気ないラインナップが、その後の視聴体験というか、帰国後1週間経って今も続くこの気持ちにまで続くとは夢にも思わないわけですが。

秒速5センチメートル

で始めたわけですが、画面の桜と一人称と幼い二人のやり取りに一気に世界へ入って…。

あとで知りますが、ネットでは簡単に「鬱エンディング」とか言われている有名作だそうですね。それを否定するつもりはありませんが、決して突然、あのエンディングに突入したわけでなく、第2章の亜熱帯地方とは思えない乾いた描写や、第3章の希望をまるで感じさせないカットバックは、最後の決定的な瞬間への予兆です。当然の帰結。

とは言え、踵を返す速さには一瞬の希望さえ持っちゃ駄目なのかと、悲してくて、つらくて…。詳細な感想へ

後に観る「言の葉の庭」も「君の名は。」もですが、鑑賞後、何か胸を強く抑えつけられた感じがずっと残り続け、食欲もありません(これは帰国後1週間以上続き、今もだ)。ハッピーエンドなのになぁ…、と、これが「君の名は。」を観た後の不思議な心持ちでしたが、これ全部、新海誠作品の主人公らの感情に同化し、感情を猛烈に揺さぶられた結果、酔っているんでしょうね。しかも抜け出せないまま現実と折り合う必要があるため話は更にややこしい。破壊力がすごすぎて、これ東京で暮らし始めたばかりの自分が観たら、家から出てこれなかったのではないか、と思います。

今更ですが「君の名は。」のバイト先の奥寺先輩が夜、旅館でタバコを吸うシーン。まったく意味も感じずただ眺めていましたが、あれって明里しか見えていない貴樹を見る花苗と同じだったのですね。瀧をどれほど見つめても、彼は三葉しか見ていない。それでも思わざるをえない。終盤、結婚指輪をして瀧と会うシーンも、通り過ぎる電車を見つめる貴樹と同じように、ずっと伝えたかったのでしょう、「まだ間に合う」と。

私は映画の何処を見ていたのか?

星を追う子ども

新海誠にとっての実験作。日本の長編アニメも一本体験しておくか、という感じだったのではと思います。無謀な話を実直に展開して驚かされれました。詳細な感想へ

「君の名は。」関連で言うとご神体の様子とその途中で川を渡るシーンはまんまアガルタへの道。そりゃ「ムー」も協賛するわな。

言の葉の庭

もうね、観終わった後、涙でぐしゃぐしゃ、座席でぐったり。頭のなかでは秦基博の「Rain」が鳴り止まずですよ(今も)。しばらく立ち直れず、ユキノの叫びが耳から離れず。

そして何でもない見飽きた東京の風景をこうまで美しく撮ることに、ただ感謝と感激です。詳細な感想へ

「君の名は。」がいかに新海誠の集大成だったのかがよく分かりました。電車や都市の様子、森の中の木漏れ日、隕石の落下、電車の扉とふすまが開くカット、怒涛のエンディングへのスピード感、そしてラスト。

あとで知りましたがユキノは「君の名は。」の古典の先生とか。あー、また観なければ。

この世界の片隅に

周囲の評価は高く、信頼する身近な人も「戦争映画で初めて怖いと思った」と絶賛だったのですが、私には合いませんでした。

すずのふわっとした性格付けと、のんの解釈には終始違和感しかなく、元の同級生への訴えや、遊女との会話シーンなど記憶に残る箇所も多く、独特のユーモアもありますが、それ以上のものを感じ取ることはできませんでした。

時をかける少女

「時をかける少女」を最後に持ってきたのは「サマーウォーズ」が傑作だったから。同様に楽しく観ました。

とにかく真琴のバカぶりが最高。繰り返されるでんぐり返しで頭を打つ絵的な可笑しさが強烈なフックとなって全体をつなぎます。妙に平板で8等身(?)のキャラクターに最初は戸惑いますが、画面をフレッシュに演じる若手俳優のように感じられると、あとはスピード感で一気。魔女おばさんの落ち着きもよい。

が、これもあとになって魔女おばさんが20年前の「少女」だと知って、あの一瞬映る写真がそうなのかと思いだすと、うわぁ、これも二度目が必要かー。

秒速5センチメートル と 言の葉の庭

このあと「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」をもう一度観て、成田空港着。胸を強く抑えつけられながら、新海誠のファンになったのでした。

小説があるので読まねば。『小説 君の名は。』を安易なノベライズと思って敬遠した1年前が恥ずかしい…。

 

atachibana

立花明 - 東京都在住、IT系企業勤務。 WordPress Document Team メンバー。 連絡先はこちら

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