運命の息子(上)(下) / ジェフリー・アーチャー / 永井淳訳 / 新潮文庫 / 各705円+税
カバー装幀: 緒方修一 / カバー写真: (C)Sam Harris/amana images
Sons of Fortune by Jeffrey Archer
カートライト家に生まれた双子は、一人はナット・カートライトとして、もう一人は病院で死んだ子どもフレッチャー・ダヴェンポートの入れ替わりとして育てられる。
ナットはベトナム戦争での従軍を経て銀行家に、その後共和党のコネチカット州知事候補として予備選に勝利し、共和党側候補となる。
一方フレッチャーは法律事務所を経て、コネチカット州民主党上院議員、州知事候補となる。
『ケインとアベル』の流れを継ぐ大河モノ。今回は場面場面で二人をすれ違わせながら結末になだれ込む展開のため、構成や人物配置がとても凝っています。また読者側の予想を裏切る展開をいくつも用意するのはいかにもアーチャー。いくつか消化不良の部分もあるはずなのですが、そう感じさせない力技のリーダビリティは相変わらずうまいです(たとえば出生時の秘密とか)。主人公二人、そして家族や友人の造形、大小エピソードの作りも良く、後半は特に気持の良い読書ができます。
そんな中、永遠のライバル、ラルフ・エリオットの造形だけは失敗。何故にここまで小賢しいのかの説明があればもっと彼の動きに説得力が増すのですが、現状は、いつでもどこにでも現れて邪魔をする都合のいい男。最後の最後まで納得のいく動きになりませんでした。特にラスト。
ところで本書を開いて驚くのが文字の大きさ。一瞬、何が起きたのか分からないほど。後半は慣れましたが、しかし…。