本の雑誌 2024年6月号 – 川添愛を覚えた

投稿日: カテゴリー

本の雑誌 2024年6月号 (No.492) 板わさ雨宿り号 / 本の雑誌社 / 700円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集: 研究者の本が面白い!

マジックリアリズムの特集でもそうでしたが、キュレーター東えりかの案内を経ての、ブックリストを作ろう鼎談の流れががとても分かりやすく、かつむちゃくちゃ面白い。こんなに楽しげな本があるのかと驚くし、こうやってリストの中に置かれると、みんなが絶賛するので俺はいいよと思っていた『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』も素直に読む気になるので不思議です。そして、仲野徹の大阪弁がまろやかで可笑しい。立命館大学教授の小川さんは竹中直人みたく笑いながら喋るとか、どんな紹介なの。
ところで東えりかは生物系の大学だったらしが、どうやったら北方謙三の秘書になれるんだろう!?
神谷竜介が挙げた『人類と気候の10万年史』は、堆積物から日本で起きた10万年を振り返り未来を予想する古気候学。凄いね。そして栗下直也は『マルクスに凭れて六十年』。奥さんと失踪して行方不明の人。ちなみに傘寿は80歳。調べました。

なお今号で知ったのが言語学者の川添愛。特集では『白と黒のとびら』を代表作として挙げられ、高瀬隼子の3万円図書カードで『言語学バーリトゥード』、大森望の『AIを生んだ100のSF』にも登場します。覚えておきます。

新刊

大森望が超ハイレベルな短編集と推す『嘘つき姫』が良さそう。関係ないけど高瀬隼子は『ここはすべての夜明けまえ』買ってました。そろそろか。
酒井貞道のミステリーは相変わらず凝ったものばかりで、『切断島の殺戮論理』とか絵柄的にどうなんだって感じだけど、『春のたましい 神祓いの記』の感染症対策で祭祀が行われなくなったら怪異が増えるって背景はいい。
佐川恭一推しの松井ゆかりは『就活闘争 20XX』。まだ読んでないのでスキップ。
東えりかの紹介を読んで知ったけど、香山リカは北海道で診療やってるのか。『トランスジェンダーになりたい少女たち』は抗議で発禁になったと思ってたら出版社を変えて出たみたい。安易な性転換手術?を批判する内容なのに、タイトルだけで奨励してると早とちりしたのかね、批判者は。
杉江は『方舟を燃やす』を激賞。主人公のうち一人は同じ学年でちょっと興味はあるが、年の差の恋愛モノなのかな? 浜本の『22歳の扉』はうーむ、今更読んで楽しいのか!?
山岸真の紹介で『シリコンバレーのドローン海賊』にキム・スタンリー・ロビンスンのインタビューがあることを知りました。買う。『未来省』は面白くなさそうでなかなか手が伸びないけど…。その前に火星三部作もあるな…。

連載

大槻ケンヂは「刑務所のリタ・ヘイワース」と映画「ショーシャンクの空に」を比較し、ピンナップガールの扱いに怒り、ポスターの向こうの穴に産道のメタファを読み取ります。ほんと冴えてます。
♪akira の映画「関心領域」は、幸せそうに家族と暮らすアウシュヴィッツ強制収容所所長。これはつらい…。
「本を売る技術」は最終回。あー、この営業マンは杉江だったのか!? 本当に彼は優秀な編集だな。そしてやっぱり偽名にする意味が分からない。
内澤旬子はヤギ舎内でのヤギの引っ越しの話。カヨが弱っていて悲しい。
服部文祥は民話が絶命する話。2ページのエッセイに詰まった文化的な喪失が途方もなく大きく、しかもまったく解決策がなさそうなのでクラクラします。そういえば小学校の比江島重孝校長先生がそんな活動をしていたなと思い出しました。風野春樹も失われた頭上運搬の記憶。昔の日本の蕎麦屋の配達写真を見たことがありますが、自転車に乗った配達員が片手ではるか頭上にそびえる蕎麦を抱えていてフェイクかと思いました。昔のアニメは大げさじゃなかったのか。
堀井慶一郎は海外小説の読み方。人名の愛称問題ってあるよな、小さい頃アガサ・クリスティを読んでよくハマってました。あとスペル問題ね。詳しくは書けないけど。
柴崎友香の10冊はその微妙な立ち位置が特徴のようで、大塚真祐子の文章はそれをうまく紹介しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です