斧田小夜『ギークに銃はいらない』

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ギークに銃はいらない / 斧田小夜 / 破滅派 / 2200円 + 税
カバー: 斧田小夜

ギークな少年らが遭遇する事件、入眠装置でも安眠できないトラウマ、突然の父性の喪失と負う役割。SFの仕掛けの上で小さな勇気や勝利や謎が描かれます。 都内の夜明けのシーンと交易びとゲレクタシの言葉が印象的でした。

ギークに銃はいらない

ハッカーに憧れる少年たちが偶然出会った事件に対して示す小さな勇気と成長の物語。心情を語らないディランの、絶望や怒りを汲む、リサの感情の揺れがいい。事件に戸惑い、隠れ、踏み出す中で、自身の変化を見つめるジェシーの視点もいい。

「まとも」なハッキングも読みどころ。詳細で手加減のない脚注を時代に合わせて改めるなら、本文自体を改稿すればいいいのにとも思うが、Telnetが使えない現代ではそれも難しいか。

眠れぬ夜のバックファイア

快適な夢を届けるセンサーデバイス「In:Dream」のカスタマーサポート間宮と、そのユーザーで不眠症気味の葉子。少しずつ明かされるその不眠の理由が苦しく厳しい読書になります。しかも、自分がされたことを、間宮にぶつけている節もあって、徐々に苦しむ間宮がリアルにホラー。唐突に現れる夢の中の都内の夜明けが美しい。

カスタマーサポートルームの様子に、「ギーク…」とのつながりで勝手にUSのオフィスを想定していたら清澄白河でギャップに笑いました。まぁ、たしかに日本人ばかりでしたけどね。

春を負う

病弱なタツェの少年ツァンクーは、チェギ・ルトとして父ガプガワンの後を継ぐことが決まっている。タツェに春が来ると、交易びとゲレクタシがツェチュから来る。ツァンクーは、自分に愛情を示さないガプガワンよりも、ゲレクタシに親しみを感じる。

「俺はな、おまえの父さんにはなれないんだよ」「おまえはちょっと、俺のほうに倒れかかりすぎてる」率直で素直で正直であっても少年には厳しい言葉です。その後、唐突に長を継ぎ、判断の連続を求められ、無理やり成長させられるシーンも痛い。

ミンヤンはもう少しドラマがありそうなのでもっと読みたい。

冬を牽く

チェギ・ルトの襲名儀式は「美しい山」ラシャで行われた。ツァンクーは、ツェチュの少年の捜索時、ラシャでの父とのやり取りとその後を回想する。

「春を負う」で描かれなかった襲名儀式をメインに据えます。ラシャが人工的な建造物であることはすでに匂わせてあったので大きな驚きはありませんが、双子の妹でなく、ツァンクーがチェギ・ルトを襲名する意味や父親の態度を知ると残酷です。舞台設定の充実度と仕掛けの大きさがページ数に合ってないので長編で読みたいです。

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