本の雑誌 2022年5月号 – 西村賢太なら「生き様」が許されるのかツボちゃんに聞いてみたい

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本の雑誌 2022年5月号 (No.467) / 本の雑誌社 / 750円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「出版業界で働こう!」

出版社面接担当者本音座談会が良かったです。その出版社の扱う作品のオタクより、話題の幅が広い、ミーハーな活字好きの方が良いという話で、食わず嫌いはダメとも。ボンヤリした本好きには、編集は無理そうです。商売のための本作りなので当たり前ですかね。
大塚真祐子は本田恵子の『月の夜 星の朝』が『りぼん』にはまるきっかけと紹介。おぉ、妹の定期購読していた漫画で好きになって、単行本も買った作品だ! 少し調べると続編があって35歳にはひどいことになっているみたいだ。読みたくないぞ。
塩澤快浩は1991年早川書房入社でほぼ同年代。私は大学4年時、出版社に就職するという発想さえなかった(英語で落ちたろうけど)。東京の大学に行ってたら意識も変わってたのか。

大槻ケンヂはオカルトにハマるきっかけに、現象を斜め上から理論展開するこれじゃない感を紹介。面白い。私は陰謀論の中身はさっぱり響かないけど、陰謀論を信じる人には興味があるので、同じことかも。

宇田川拓也は月村了衛『脱北航路』の紹介。北朝鮮海軍の潜水艦長が乗員と共に亡命する冒険小説。拉致被害者も乗せてて、日本側には45年前の拉致を見逃した元警官らを配置。これは絶対熱い! 月村了衛はそろそろ読まなあかん人になってきた。
そういえばジャック・ヒギンズが亡くなりました。最近の読書は比較的、キャリア後半のものが多く、不満しか出てきませんが、ハヤカワ文庫の初期の作品はどれを読んでも面白かった。未読の中にいいものがあることを願います。

♪akira の紹介するシャーリイ・ジャクスン『壁の向こうへ続く道』と映画「ハッチング – 孵化」。どっちもイヤさmaxで近寄りたくない。
田中香織の紹介するモクモクれん『光が死んだ夏』もなぁ、怖いなぁ。
藤ふくろうの海外文学新刊紹介も厳しそうな本が多い。

吉野仁が紹介するグレッグ・ブキャナン『災厄の馬』の幕開けは、円を描いて埋められた16頭の馬の死体。とか。ここまで意味不明だとどんな動機なのかそれだけでいいから教えて欲しいわ。

川口則弘の文芸記者列伝は、夏目漱石の弟子の森田草平。平塚らいてうが、いきなり繋がる混沌。人も新聞もデタラメで面白い時代です。

江部拓哉の「生きていく上で自分に課している他愛もない決め事」は分かるなぁ。宝くじは買わない、ドン・キホーテには行かない、缶チューハイは呑まない、映画は映画館以外では観ない、ウーバーイーツは頼まない。どれ一つ完遂できていないけど、わかります。

古本屋台はおじさんが屋台を引く回。のどかな春の平和感が良い。最後の、3コマの間が特にいい。ちなみに三角窓口の時田良枝と同じ読み方で、私もチラチラ後半を気にしながら読んでます。

藤岡みなみは、タイムトラベル小説入門書として、ケン・グリムウッド『リプレイ』、広瀬正『マイナス・ゼロ』に加え、「時間SFの幕の内弁当」、宝樹『時間の王』を推薦しています。楽しい読書になりそうで期待大。『三体X』はどうするかな、もういいかな。
風野春樹は島田拓哉『野ネズミとドングリ』。野ネズミにとって毒であるタンニンを含むドングリを、なぜ自然界では食べるのかを仮説、実験で追う話。結論は明かさず、アプローチ方法を丁寧に解説して、メインの疑問には回答を与えないうまい紹介です。気になる…。「今月書いた人」での老眼話は切実。もうこのページがきついからね。

堀井憲一郎は本屋大賞ノミネート作10冊に挑む。本当に書店員は全作読んでるの? 自腹で買ってるの? という微妙な疑問をぶつけます。私も最初は思ったけど、10冊中、1冊も読んでない人は多分、2次投票に来ないし、書店員なら多少の割引もあるし、書店チェーンによっては参加を奨励しているところもあるだろうからそこまで負担はないのかなと思います。書影が大賞の『同志少女よ、敵を撃て』なのは編集部の配慮か、筆者の指定か(実際、絶賛してます)。

朝松健の10冊。ホラーと時代伝奇小説は担当外だなと思ったけど『血と炎の京』に「全盛期のアリステア・マクリーンやジャック・ヒギンズもかくやの戦時冒険小説」と書かれると、ちょっと気になりますね。

次号は西村賢太追悼号。不謹慎だが、行ってたお店とか編集者とか楽しみです。「生き様」は西村賢太ならいいのかなぁ。毎回、文句を言っていたツボちゃんに聞いてみたい。

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