本の雑誌 2021年5月号 – 本屋で紙の本を買おう !

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本の雑誌 2021年5月号 (No.455) / 本の雑誌社 / 750円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「本屋がどんどん増えている!」。
誠光社、Title、青いカバといった「個性的」な書店がオープンしていることは知っていましたが、それはガンガンん本屋が潰れていく中の奇跡のようなお話と思っていました。あるいは東京の一部でのみ展開できる特殊な話と。
それが、どうもそうではなく、厳しい現実にしなやかに対処している本屋が増えてきている、ちょうど、コロナ禍で苦しみながらも経営方法を変えたレストランのように、しかも全国でという特集でした。

和氣正幸がこれまでの流れを簡潔にまとめています。
「90年代に種が蒔かれ、00年代に芽が出て、10年代に成長し、20年代で花が咲き始めた」
SNSやメルカリのような個人売買の意識の変化、流通の整備に加えて、「紙の本が好き」と断言して私を快哉させた渡辺佑一の「一冊!取引所」や、ミシマ社、トランスビューが果たした役割も大きいようです。

「全国独立系本屋112」のリストは充実の8ページ。本屋大賞でいつも2次投票不在だった文化発展途上県の実家、宮崎はないよなぁ… と見たら、おぉ「KIMAMA BOOKS」さんってのがあった! 宮崎駅からちょっとあるけど帰省したら行ってみよう。

新刊は吉野仁『父を撃った12の銃弾』と『瞳の奥に』。前者はこのタイトルでオムニバス風というのだから絶対面白いでしょう。ラストにどう集約するのか(しなくても)楽しみです。後者は快哉するか脱力するか、のどちらからしいので恐らくバカミスなのでしょう。ほんのちょっとだけ読んでみたいわ (読まない)。
台湾と日本について大ぼらを吹きまくったジョージ・サルマナザールの『フォルモサ 台湾と日本の歴史』は出落ち感満載。途中で飽きそう。『消失の惑星』はラストに到着するまでがつらそう。
ケン・リュウ『宇宙の春』は731部隊を扱うのか。これは読む。
古山裕樹のミステリー新刊は凝ったものばかり。中では『ヴィクトリアン・ホテル』の集約さが楽しそう。宇田川拓也の紹介する『第八の探偵』も同じ趣向かな。
冬木糸一のノンフィクションはいつもどおりどれも良さげ。ディズニー初期に活躍した女性を取り上げる『アニメーションと女王』、戦争の扱いがどう変化してきたかを描く『アニメと戦争』、そして、世界は良くなっているんだ、というメッセージが強かった(耳に心地いいというのもありますが)『繁栄』の作者、マット・リドレーの『人類とイノベーション』。「イノベーションにおいて個人は重要ではなく、それはただ起こるべきときに起こる。だが、イノベーションが起こりやすい環境はある。」だそうです。ちなみに本文中で触れた『進化は万能である』を鏡明が「結果によって全てを判断すべき」超ポジティブな進化論として紹介しています。
北上次郎の紹介する『少年は世界をのみこむ』も、12歳の少年と、何度も脱獄した70歳過ぎの老人の会話とかいいな。

穂村弘「昭和のルール」はあるあるだけど萩原朔太郎の「狼」は合うなぁ、さすがだ。

群ようこの新刊『小福ときどき災難』の広告ページに「年金問題」とあり、驚いて生年月日を確認しました。いつまでもちょっと年上の女性、って立ち位置だったのだから当たり前と言えば当たり前なのですが、それにしても木原ひとみが年金かぁ…。

下井草秀「日本版ジャケットのひみつ」で取り上げるのは、なんとAOR! 「A」は Adult 説と Album 説があるアレです。福田直木の言葉「『ヒゲ面で、少々オツムの寂しいオジサンが、仲間にしてほしそうにこちらを見ているジャケット』は差し替え対象になる」に大笑い。クリストファー・クロスやエア・サプライあたりか。
内澤旬子はインパクトドライバー。マキタがいいそうですよ。動画を見てもどう「インパクト」なのかよく分かりませんが…。で、最初に買ったのはリョービ製。フォントの会社じゃないのか、ってのがまたいいな。

高野秀行は『百億の昼と千億の夜』の続き。ムーをも圧倒すると読みどころ、面白どころを徹底紹介した上で、この程度ではネタバレにならないと来たもんだ。素晴らしい書評。これは読まねば。

服部文祥はアニミズム。「本の雑誌」読者なら繰り返される、自分と獲物の境界が失われる感覚はおなじみでしょう。私も八百万の神信仰にも共通する自然な感覚と思う程度には感化されました。
V林田は国鉄民営化についてですが、その前に最低限の知識さえ持たない者が批判する姿勢にダメ出し。
先月号から、竹久夢二の展覧会や送別会の共演が淡谷のり子と知りました。私の知る彼女は正体不明の「ブルースの女王」とやらのおばあちゃん、でしたが、そんな過去があったなんてとただただ驚きました。美輪明宏と三島由紀夫とか、樹木希林と津野海太郎とか、80年代サブカル以前のサブカルの人間関係も、そこがつながるの!? 感がいいですね。

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