本の雑誌 2021年4月号 – サブカルでの樹木希林の立ち位置が知りたいと思いました

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本の雑誌 2021年4月号 (No.454) 花かつお山盛り号 / 本の雑誌社 / 800円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「津野海太郎の眼力」。

かつて彼が連載していた「サブカルチャー創世記」と「百歳までの読書術」が本当に面白かったんですよね、アングラやサブカルを文字どおり作った人々の話。「宝島」の前に「ワンダーランド」があって、私が名前を知ったときにはすでに伝説だった植草甚一のスクラップブックや、小林信彦の『東京のロビンソン・クルーソー』、片岡義男、樹木希林等々。あと、晶文社っていけてたんだなぁ、とか。いつだったか円城塔『道化師の蝶』を「面白い。どこが難解なの?」と評したのも覚えてます。

本特集は、津野海太郎が過去に作ってきた本のリストや年表をベースにインタビュー、振り返りをしたもの。もしかしたら亡くなる前に特集にしたかったのかな。佐久間文子がインタビュアーだけど、もしかしたらツボちゃんだったのかな…。と、いろいろ考えました。ちなみに、上に挙げた彼の連載には、浜本編集発行人の強い意志があったのだそうです、初めて知りました。

図書カード3万円分使い放題企画は大槻ケンヂ。『キング・クリムゾン全史』で笑わせてくれます。しかし、まさか「ムー」への言及が同じ号に2つも、しかも1つ挟んで連続して掲載されるとは思わず、力の入った紹介で続いたのは我らが高野秀行で光瀬龍『百億の昼と千億の夜』。こんなムーみたいな話だったのかと驚きました。
間に挟まったのが内澤旬子の新連載 DIY。小豆島への移住にはこんな理由もあったのですね。インパクトドライバは初めて聞きました。木ネジをなめずに、力を込めるなんて、どんな機構なんだ。調べるのは次号出てからにします。

新刊では、ドイツ占領下のフランスで戦った実在の女性をモデルにした『解放 ナンシーの闘い』、冲方丁『アクティベイター』、冬木糸一は全部いいけど、特に『映像編集の技法 傑作を生み出す編集技師たちの仕事術』、北上次郎も全部いいけど、暑苦しいマジックリアリズムが炸裂してそうな佐藤究『テスカトリポカ』と、絶対泣くわと思う瀬尾まいこ『その扉をたたく音』。逆にうーん? と思ったのが『あと十五秒で死ぬ』の一編。論理はきっちりしているんだろうけどここまで作るかなぁ…。カズオ・イシグロ『クララとお日さま』もSFなのにときめかんなぁ。タイトルがほんわかしているからか。

穂村弘のメインは土屋隆夫『危険な童話』ですが、楳図かずお『わたしは真悟』が記憶に残りました。
♪akiraの紹介する映画は「ビバリウム」。同じような家ばかりが並ぶ新興住宅地から出られなくなった引っ越し予定のカップル。こんなSF短編みたいな話で映画ができるの!? 観たい。

田中香織が紹介するのは『ロスト・ラッド・ロンドン』。海外ミステリー新刊のような話をモノローグ抜きで展開するらしい。見たい。
べつやくれいは『まぼろしの奇想建築 天才が夢見た不可能な挑戦』。建てられなかった建築物らしい、これもいいね。さらっと添えられた目付きの悪いメーテルが良い。
大山顕は高層住宅に絡めて『童夢』『家族ゲーム』『しとやかな獣』を紹介し、2000年までは死、それ以降は住民間の格差やいじめが問題の中心になるとか、崩壊にバベルの塔やWTCを見たりと相変わらず冴え渡ってます。
下井草秀は川名潤の「群像」での連載を紹介。面白そうなエピソードばかりですが中でも「写研とモリサワという2大書体メーカーの興亡史」に興味を持ちました。会社名は聞くけど、基本的な事実さえ何もわかっていないので、写真植字からDTPで何が変わったのか具体的に知りたいんですよね。それこそ津野海太郎の「本とコンピュータ」のテリトリーなのかもしれない。
V林田は宮脇俊三の紹介。最後の一文までの流れが素晴らしい。人となりがよく分かりました。
堀井慶一郎は「『ハレンチ学園』はどれぐらいエッチだったのか」。タイトルで大笑いですが、通常の10分の1くらいしかふざけてないので元気なく感じられる。なぜだろう? いつも辟易しているのに無ければ無いで寂しい。
読み物作家ガイドは多和田葉子の10冊。不思議なストーリーばかりで「奇想」という言葉が浮かびました。ドイツ語日本語ぐしゃぐしゃの詩まであるらしい。ムチャクチャ面白そう。

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