本の雑誌 2018年2月号 – こんなはずじゃない近未来における作品ガイド

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本の雑誌 2018年2月号 (No.416) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「近未来へ翔べ!」

一言で言えば、少し昔に描かれた「未来」は分かりやすく、魅力的で、ピカピカしていたけど、最近の「未来」はぼんやりとしていて、暗く、つまんないよねという特集です。

原稿用紙の1行目に「2018年」と書けば、それは遥かな未来だった時代。そのときの予想では、街中をエアカーが飛び回り、食事の手配から教育から何もかもが自動化され、月面の宇宙基地では人工太陽の下で野菜が育てられているはずでした。
1980年代でさえ電脳世界には同様の夢が描かれ、サイバーパンクでアウトローなカウボーイが大企業や政府とネットで戦っているはずでした。
なのに、どこをどう間違えば「小遣い稼ぎに東欧のハッカーがフェイクニュースを流す」ような時代になってしまったのか、と。モザイクが生まれた頃、何かが始まろうとしている手作りの胎動感って確かにありましたが、それがいつの間にか「ビジネス」になり「文化」になりフツーのことになってしまい…。

最近、特に21世紀に入ってからこの手の話題はよく出てくる気がします。堺三保と牧眞司の対談もその流れの中で藤井太洋やピーター・ワッツらを挙げながら、読むべき作品をガイドしていきます。未来が明るいのはクラークくらいだそうですが、昔から今ひとつ突き抜けた魅力を感じなかったのはこの「いい子ちゃん」のスタイルのせいなのだなと再認識しました。周囲のディストピアのほうが魅力的だし、かっこよかったのは今も昔も同じです。ここらへんを俯瞰した大森望の「用語解説つき近未来小説ガイド」では、現在に至るSFのテーマと代表作が手際よくまとめられています。量子コンピュータや並行世界も含めもっとページが欲しかったですね。

新刊では最近元気なル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の続編『スパイたちの遺産』と、ダグラス・アダムス『ダーク・ジェントリー 全体論的探偵事務所』。内容も期待ですが、タイトルも書いているだけでドキドキするくらいかっこいい。

『阿久悠と松本隆』はどんな切り口なのか興味があります。大滝さん出てくるかな。

最近のミステリーの凝り方って凄いなぁと毎回、宇田川拓也のページを見ながら思いますが、今回は『オーパーツ 死を招く至宝』と『エベレストの鉤十字』。特に後者は、あり得ない環境にありえない時代の遺物 – それは遺体でもモノでもいいけど – って展開が好みなだけに、その上に山岳ミステリーとナチスが絡むかと思うと、これは読みたい。

ケン・リュウの新作はスター・ウォーズ正史『ジャーニー・トゥ・最後のジェダイ』とか。新刊で買っとかないと見つからなくなりそうです。

平井和正のウルフガイシリーズが生頼範義展に合わせて復刊されていました。これを書きながらそろそろ上野の行くかと思ったら先週までで終わっていました。あれだけ加藤直之のツイートで気にしていたのに…。がっくり。

西村賢太は自身が試みた私小説の「手法」から展開して、批評家批判。理解してもらえないんでしょうね、まぁ、私も彼の小説を読み解く自身はありません。

徳永圭子はハン・ガン『ギリシャ語の時間』。バックナンバーでも誰かが取り上げていましたが「中動態」という響きに改めて興味を持ちました。能動でも受動でもない関係の中で、結局、二人は惹かれるのかすれ違うのか気になります。

田辺聖子は1冊も読んだことがありませんが普通の女性が普通に描かれているようで、『言い寄る』とか普通に読めそう。変化球ですが『田辺聖子の古事記』も良さげです。

 

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