本の雑誌 2016年7月号 – 隅から隅まで面白い号!!

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本の雑誌 2016年7月号 (No.397) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集や連載の大部分が面白く、今月号は立派だったなぁと思うときが、たまーにありますが、今月号がそれ。真っ直ぐな特集と力強い連載がそろいました。
素晴らしいです。

特集は「読書の原点を探せ!」要は少年少女の入り口としての読書。

素直な特集のためか、おじさん3人組もインタビューも対談も読者のはがきも実直で力強い特集でした(ただし「この本を読むとこうなる!?」だけはつまらない)。

私は福音館書店も岩波少年文庫も『からすのパンやさん』も『いないいないばあ』も『はらぺこあおむし』も知りませんでした。こういう所でお里が知れますね。
最初の記憶はなんだろう?
当時、百科事典を各家庭を回って売りつける訪問販売方法があって、その関連でまとめて買った絵本に『はけたよ、はけたよ』や『モチモチの木』があったのが最初かな。すでに小学校3、4年生だった気がするけど。

椎名誠は野田知佑の最後のユーコン川下り本を紹介。「最後の」になってしまうところが寂しく、こちらもほろ苦くなります。偶然ですが目黒考二も、北方謙三の次回作(テムジンの物語)に対して「完結を私は読むことができるだろうか」と心配します。うーん。

内澤旬子は反比例の法則。人間クズなほどスーツが似合うという関係の話し。まぁ言葉はなんですが、保守派の方の方が型や古典の良さを理解しているってことなのでしょうね。あと親からの教えもあるよな。

服部文祥の命の考察は哲学に入って腰砕け。残念。何となくは分かっていましたがツボちゃんは物凄いお金持ちだったのですね…。

秋葉直哉は偶然に「発見」した編集者、樋口至宏の話し。次々と書棚の本を抜きながら再発見する様子が素敵です。

新刊ではいつもはあまり波長の合わない沢田史郎の推す『ロボット・イン・ザ・ガーデン』が良さげ。ベンとロボット「タング」のロードノベル。シチュエーションだけでずるいわ。あと北上次郎の推す『大統領の冒険』。苦労して敷設した電線が無線で無駄になるとか、昔から泣ける展開です。

鏡明は『世界の終わりの七日間』、三部作のテーマの変化、主人公を取り巻く環境の変化を珍しく丁寧に転がして分かりやすい。こんなSF評をもっといっぱい書いて欲しいわ。

青山南は『人生がときめく片づけの魔法』の英訳版に対する評価。まず平野キャシーの訳語「Spark Joy!」を褒め、大勢の賛同者と冷めた評論を混ぜて紹介します。

円城塔は電子書籍に対し常に不満を述べていましたが、世の中が落ち着いてきたこと、電子書籍の「方向性」が見えてきたことに対して、「よくない」と強く主張します。紙の本からの引き写しじゃダメなんです、と。

若島正は『下り階段をのぼれ』の紹介。1964年。文中、高校生の多用する「fuck」に抵抗する出版社が、何とか fuk にならないかと相談するも作者は断固拒否。「この子たちは綴りがでたらめだけど、この単語だけはちゃんと綴れるのだ」。いいなぁ。

歌野晶午の10冊を眺めていると、色々爆弾が炸裂していそう。新本格がまったく素人の私には楽しみの山が控えています。『葉桜の季節に君を想うということ』読んでみるかなぁ。

締め切りの都合はあると思いますが吉野朔実に触れたのは穂村弘だけ。「悲しくて優しくて美しい」彼女の短歌を紹介します。「魂の孤独」は重いですね。次号は追悼号です。

 

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