トミーノッカーズ – 「怪作」でいいと思います

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トミーノッカーズ(上)(下) / スティーヴン・キング / 吉野美恵子訳 / 文藝春秋 / 各2700円+税
装画 : 藤田新策 / デザイン : 坂田政則
The Tommyknockers by Stephen King, 1987年

前半はボビとガードナーの矮小な話に始まり、中盤は架空の町ヘイヴンと住民の話、そして最後はいつもの全員ごった煮の大騒動。

何を言ってもネタバレになりそうな、これまでのキング作品とはまったく異なる作品。「大騒動」と聞けば、普通インフルエンザとか狂犬とか殺人鬼とかが浮かぶと思うのですが、斜め上の遥か向こうの方にまで行ってしまいます。この手の話が好きな私でも、あまりのくだらなさに笑うやら、困るやら、不思議な感じ。たとえば壊れた時計台の処理とかねぇ…。

相変わらず様々なキャラクターの造形は素晴らしいです。中ではボビの姉アンの造形が傑作。強烈な性格がそのまま物語の中で行きます。

個人的に重要な話を一つ。
本書にはクーンツの『ウオッチャーズ』への言及が、然るべき要素として出てきます。『12月の扉』の解説で尾之上浩司が、「キングはクーンツへのリアクションがほとんどない」、つまり、ライバル視して、わざと無視してるんじゃないかと書いていて、ずっと気になっていました。あらゆるホラー要素や B級要素を受け入れるキングが、そんな矮小なことするかなぁ、と。
本書を読めばキングが『ウォッチャーズ』をきちんと読んだ上で、高く評価している事が分かります。20年に及ぶ疑念が解けた次第です。
そういえば『死の舞踏』では『デモン・シード』をナンセンスとけなしていたので、そう意味でも無視はしてないですね :-P

ところで実際に本書を読んだのは半年ほど前で、今、2011年3月の東日本大震災後にこの記事のために読み返していますが、原子力発電所への言及が笑えません。元々は偏執狂的なガードナーの役作りのために、直前に起きたチェルノブイリ事故を絡めただけで、半年前もそのように読んだのですが、劇的に状況が変わってしまいました…。

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