本の雑誌 2023年9月号 – 世界大博物図鑑を揃えたくなった

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本の雑誌 2023年9月号 (No.483) みたらし見参号 / 本の雑誌社 / 800円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集「平凡社は本当に平凡なのか?」

山本貴光は開口一番、平凡社とは何の関係もない IBM System/360 について荒俣宏に確認するところから始め、「多かれ少なかれ機械との対話というのを始めた最初の世代ですから、いまだに機械は人間よりバカっていう絶対的自信を持っております。」という言葉を引き出します。最高のオープニングです。その後の吉川浩満の対談も、人文系の魅力がよく伝わる内容でした。「知」を求めるだけが読書じゃないだろうけど、知りたいという欲求に身を任せての読書は実に楽しそうです。

さて平凡社。昼間から酒盛りしつつも百科事典や「アニマ」や「太陽」や東洋文庫を出している会社は憧れます。冒頭の会長の「本棚は大事。」ってのもいい。
大石範子は『世界大博物図鑑』をして「バブル期につくられた最良の産物であり、お金はこういうふうに使えという見本だったのだ。」と書いていますが、それがそのまま会社にもあてはまっていたようです。素晴らしい図書室がなくなったのは寂しいよな。

宮田珠己の平凡社の10冊はデタラメな嘘歴史本ばかりで楽しい。1位の『世界大博物図鑑』も「蟲類」は「腹の虫」から始まるし、ある意味楽しいデタラメだよな。そう言えば「本の雑誌」を書い始めた頃に、荒俣宏の『世界大博物図鑑』に関するコラムが掲載されていて興味を持ち、「鳥」「魚」と買って結構読んだのでした。値段か高くてその後は続かなかったけど、特集の中で何度も触れられると、やっぱり少しは欲しくなる。普及版が出ていることを今回始めて知って、紀伊国屋新宿店で確認したけど、うーん、小さい。やっぱりあの重量感があってこそやね。中古で買うかなぁ、意外と安いし。

他の本では矢部潤子の挙げた『胡同』に興味あり。そうそう平凡社の「平」は斜め線の向きが逆なのを改めて再認識しました。

新刊

柿沼瑛子のキング『異能機関』はもちろん買ったのでスキップ。現在再トライ中の『ザ・スタンド』の進みは悪いです。
酒井貞道の恩田陸『鈍色幻視行』と『夜果つるところ』は先月号でも触れたが、ちょっと気になる。
すずきたけしの『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命』は翻訳本なんだ、とそこに驚く。『ゲーセン戦記』の書評にからめて「人が集まる場所として「場を作る」という考え」を紹介。最近オープンする個性派書店にも同様の発言を見るのだけど、集客やビジネス的な面と、意義の部分の関係に少しモヤモヤします。慈善活動ならいいだろうけど、そんな重いテーマを本屋に担わすなよとか。

連載

大槻ケンヂは相変わらず上手い。「たまにある、知的で立場のある人がその真面目さゆえかスピリチュアルにはまる」を「コナン・ドイル現象」と名付けます。痛い人々への眼差しが優しいんですよね。
「本を売る技術」は押し寄せる配本をどうするか。結論:自分で制御できるようにする。普段の仕事にも活きる話でした。
内澤旬子はADHD傾向が強く、投薬もしているとか。何となく子供からのもので途中で判明するものでないと思っていたのでちょっと意外。なるほどそういうものらしい > https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1070.html。さてヤギの新舎。「なんでこうなる…」って書いてるけど、こんなの一人で作るの素人には無理だわ…。
岡崎武志は成功しているネット古書店の紹介。エロに特化しているから、らしい。うん、そうじゃないと厳しいだろうな。
V林田は『されど鉄道文字』。須田と佐野を上手に紹介し「いい話」を盛り上げます。仕事のオタクの話しは楽しい。
鏡明は「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」。書いてあることすべてをウンウンうなずきながら読みました。やっぱりどうしても全編、老いを感じました…。
三角窓口で常連の松岡達也が、私と同じく7月号の全ページ読破に違和感を述べている。みんな読まないの? まぁ、私も松岡ほど表1から表4まで、今月の本棚の背表紙までは読まないけどさ。
堀井憲一郎は江戸時代に出版された海外小説。そうかディケンズもポーも、何ならトルストイもドストエフスキーも江戸時代なのか…。シンプルに驚いた。

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