本の雑誌 2023年7月号 – 鏡明絶賛の椎根和『49冊のアンアン』が気になる

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本の雑誌 2023年7月号 (No.481) / 本の雑誌社 / 700円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集「謎叢書の喜びと哀しみ」

「ぎょうしょ」と適当に読んでいたら「そうしょ」でした。本のシリーズのこと、双書とも。なら双葉社は「そうようしゃ」だったのかと思ってたら三角窓口ナイス!「ふたばしゃ」でした。戻って「叢書」は字面が重いので重厚な文学全集系のことかと思っていたので、いきなりサンリオSF文庫が出てきて頭が?で一杯でした。その代島正樹「世界の縁にたつ叢書をさまよう者」。再刊済みの本は読む理由はないので、心置きなく集められる、という無茶苦茶な理論が笑えます。ちなみに私には、大瀧啓裕訳版のヴァリス三部作を読むのか問題があります(泣)。「人はどこかで折り合いをつけなければならない」の言葉が重いですねぇ。魂に染みます。「私の集めている叢書!」の先の見えなさも共感。半分本気、本文諦めの空気感も良いです。
シンポ教授の柳下和久インタビューが無茶苦茶面白い。高田文夫がエラソーなので喧嘩したとか、おすぎとピーコの仲が悪くてまとまらないとか、そもそもゴーストをあっけらかんと話してる部分に、時の経過と成熟を感じます。

新刊

柿沼瑛子の紹介する『円周率の日に先生は死んだ』は、タイトルは良いのに内容は重そうで読まないかなぁ。『死と奇術師』のトム・ミードは日本の新本格に影響を受けたらしい。しかも解決編は袋とじとか。分かってる。帯は綾辻行人。
石川美南の海外小説の紹介を読んでいると、自分自身がホロコーストや戦争等のテーマに対し、ロシアのウクライナ侵攻前後で捉え方が変わっているのを感じました。距離も時間も遠い異世界の話から、彩度が増したような。悲しいですが。
酒井貞道の国内ミステリは変わらず仕掛けの山。毎回、圧倒されただけで終わるけど、今回珍しく読んでみたいと思ったのが『敵前の森で』。インパール作戦に従事した兵士が、戦後の連合軍の取調べ中に明らかになる事件とその真相。
すずきたけしが涙するのは『オシムの遺産』。指導者、教育者ぶりがよく分かる内容紹介。『再考 ファストフード化する日本』にもあるけど、外国人のスキルが必要な領域ってありますね。

連載

大槻ケンヂは先月号のB’zのGet Wild。わぁ、気づかなかったわ…。
♪akiraは小さな友だちとの交流としてショーン・タン『エリック』と映画「マルセル 靴をはいた小さな貝」。冒頭の筆者の個人的なエピソードを含めてすべてが愛おしい。
和氣正幸は街にただ一つの新刊書店の紹介。本の雑誌社新刊広告も『本屋、ひらく』。嬉しいことなんだけど、どうしても生活大丈夫かなぁと心配が先に立ちます。せめてもと、駅そばの小さな書店でできる限り本や雑誌を買っていますが…。関連して漫画「本を売る技術」。苦手な絵柄ですが内容は読ませる。単純に手書きPOPに駄目を出すだけでなく、「本の場所は変えるけど、場所の意味は変えない」「置かれた場所で咲きなさい、ではなく、咲く場所に置きなさい」。原作の矢部潤子が凄いのだろう。
山脇麻生のおすすめは『気になってる人が男じゃなかった』。CDショップで中性的な店員に会う話。ネットで話題になった時読んで、確かに良かったけど、あれどう展開するのか!?
urbanseaが紹介する『盤上のパラダイス』の著者は若島正。多才だなぁ。藤井聡太はからまないのだろうか?

内澤旬子はヤギを4頭も飼ってたのか。カヨだけかと思ってた。
服部文祥の紹介する「狩猟の世界にはモンゴロイドを中心に、獲物の見ている世界と自分(狩猟者)の見ている世界を逆転させるという文化がある。」は好きなテーマです。ところで彼の原稿料単価は、1ページ1万円くらい。多いのか少ないのかよくわからない。
日下三蔵は本格的に並べ始めてて楽しそう。私も作者別に固めてみたい。
川口則弘の文芸記者は金田浩一呂。宮崎出身の飄々とした記者だったらしい。検索すると、宮崎健さんのページがヒット。他の記事も含め無茶苦茶面白い。エピソードがかぶるのでこのページが元ネタかな?
http://home.r07.itscom.net/miyazaki/bunya/index.html#kaneyan

V林田は東北新幹線をめぐる『太平洋回り誘致の奇跡』。政治的要因の強烈がよく分かる内容。小佐野賢治の名前を久しぶりに聞いた。原発もこんな感じなんでしょう。
古本屋台の小林秀雄。落ち着いた、気持ちの良い夜の会話。このままの時間を楽しみたく珍しく寂しげなオヤジさん。前半がにぎやかな分、いい回です。そうそう、「古本屋台」のサブキャラ的なおじさんが岡崎武志なのね。
鏡明は椎根和『49冊のアンアン』。ここまで言うなら買ってみよう。黒丸尚の言及もいい。
青山南は『グッドナイト・ムーン』に絡めての石井桃子。暗示は女性関係なんだろうと邪推します。
平松洋子は、かめや銀座店。銀座にもあったのかと驚きました。行ってみる。

三角窓口に雑誌の完全読破の話が出てくるけど、うーん、毎回「本の雑誌」を読破しているけど珍しいのだろうか。

円城塔によれば確率論と統計学には長い泥試合の歴史があるらしい。想像できるけど知らなかった。みんなもっと大人なのかと思ってたよ。
湊かなえの10冊。全部イヤミスで潔いが、まとめて読んだ間室道子は大変だ。映画「少女」の本田翼評がいい。

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