本の雑誌 2022年2月号 – 『東海道中膝栗毛』は19世紀文学だった。

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本の雑誌 2022年2月号 (No.464) / 本の雑誌社 / 815円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「選書の大海原に飛び込め !」

「選書」なんて、これまでまったく意識していませんでした。言われて確かにあるなぁ程度。定義としては、
「あるテーマに対して新書と同じようなアプローチをしつつ、もう少し文量が多いもの。ただし単行本よりは安く作れる。」
という感じのようです。山本貴光の「選書の世界の歩き方」は、整理の過程と誠実な仕事がよくわかる労作。そのためでしょうね、原稿到着も最後です。
しかし、特集全体としては真面目で、少し力が入り過ぎていて、余裕がない感じ。選書そのもののビミョーな立ち位置を表しているようです。

町田その子の本屋大賞で買った本は、同じ作家の本が2冊、3冊入るところがいかにも読書好きで良いです。参考用ではなく、自分で読むために買っている感じ。
古本屋台はおじさんに酒をおごる話。緊張感と嬉しさがいいわぁ。

吉野仁の『ベルリンに落ちる闇』の紹介を読みながら、80年経っても「ナチもの」は現役なのだなと改めて思いました。熱心に冒険小説を読んでいた80年代もそうだったのにね。さすがに残党を追う設定は無理なため、近世と扱いは同じですが、まだ少し生々しい。私が死ぬ頃までは続きそうです。
藤ふくろうのすべての紹介がいいけど、特に『十六の夢の物語 M・バヴィッチ幻想短編集』の「夢と東欧の歴史が縦横無尽に交錯」に惹かれます。
高頭佐和子の紹介では吉田修一『ミス・サンシャイン』。引退した映画女優に会いに行き、話を聞くなんて設定がいい。
北上次郎に七代にわたる島のドラマを面白いと言われたらきっと傑作でしょう、貫井徳郎『邯鄲の島遥かなり』。

♪akira の紹介する映画は「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊」。雑誌の廃刊が決まり、追悼号の記事が書かれることに。この長いタイトルをあえてそのままにした所に絶対の面白さがあるはず。配給は…ディズニーか。さすが。

田中香織は『スノウボールアース』。少年とロボットと戦いの構図に魅力を感じないのですが、庵野秀明と小島秀夫が推薦するなら、そのようなフォーマット以上のものがあるのか。

下井草秀は『アンダー・ゼア・サム』、ストーンズの裏話。日本ツアーでもドラッグきめてたとか、ミックは経営側トップ、キースらは所属タレントとか、残念と思うか、やっぱりと思うか。

西村賢太の「日乗」は降りてこないツライ回。「小学生でも書かぬ文章しかものにできぬ。」とか厳しい。

高野秀行は『トリフィド時代』。トンデモSFと思っていたのに彼の紹介を読むと面白そう。「イギリス人は世界が破滅してもパブへ行く!」という発見は、実に筆者らしい。

鏡明は「自分や自分と同じ趣味の人だけを考えて書かれた」ラノベが減って寂しいと。B級ホラーが好きな理由に似ている。あと裏表紙のあらすじを読んで検討を付けるのですね…。

藤岡みなみは手紙とタイムトラベル。言われてみれば確かに手紙は時空を超えています。書いた瞬間と読む瞬間では時間も空間も異なる。『世界を超えて私はあなたに会いに行く』はどんな展開なのだろう?
風野春樹は『観音像とは何か』。怪しさいっぱいB級感満載の観音像を真面目に論じた本のようです。確かに数百年前の仏像はエライのに、観音像は安っぽく思うのは私のバイアスなのか? 大船駅から見た観音も、東京湾で見た観音も、その柔らかな表情からはほど遠い、背筋が妙にざわざわする落ち着かなさがありました。

堀井慶一郎は『東海道中膝栗毛』を19世紀文学と紹介。ええっ !? と思ってwikipediaを見ると、1802年から1814年に初刷り。まじか!? しかも続編があって、京都、大阪、金比羅さん、宮島を経て、草津温泉、江戸、って全然東海道じゃない日本漫遊記でした。この続編の無茶な広げ方も含めて今と変わらないね。

冬木糸一は森博嗣の10冊。理系の近い属性の方でハマる要素は多分にあったはずなのに『すべてがFになる』の、天才科学者真賀田四季の造形が苦手で次が続いていません。アシモフの『ファウンデーション』もハリ・セルダンが嫌いでダメなんだよなぁ…。『自由をつくる 自在に生きる』は共感する考え方なのでここらへんから始めたい。

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