劉慈欣『三体』 – 馬鹿ネタで楽しいところはあるものの全体としては感心できず

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三体 / 劉慈欣 / 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳、立原透耶監修 / 早川書房 / 1900円+税
装画: 富安健一郎 / 装幀: 早川書房デザイン室
The Three-body Problem by Cixin Liu, 2006

非常な話題で手にしましたがうーん。つまらなくはないけど、さして面白くもなく。何でこれがそんなに話題なんだろう? ところどころで炸裂する馬鹿ネタは面白い – 始皇帝の人力論理回路とか、ナノマテリアルによるスライスとか – けど単発だしねぇ。

冒頭は良かったです。今の中国で文化大革命書けるんだ!? とまず驚き、以後はインテリが不条理に追い込まれたり、葉文潔が虐げられたり。

これが現代のシーンになると一転。出てくる多数の登場人物にまったく魅力が感じられず、ゲーム内のシーンもアイデア先行でぱっとしない。物理学者の自殺もカウントダウンも謎を生み出すためだけの材料でしかなく、たった一人の大富豪が資金源だったという背景も説得力があるようでない。

三部作だそうで、次は宇宙戦争でもあるのかしらん。

2021/5/9 再読して追記

『三体Ⅱ』を読み始めたらあまりに本作を覚えておらず、ザーッと再読しました。

導入部分や、現代のパート、葉文潔のエピソード、斉家屯の話や紅衛兵との再開、人類への恨みはいいんですよね。あとゲーム内の描写も。

しかし、ラストの三体人のパートは、広げた風呂敷を畳むのに忙しすぎて、1379号監視員の行動も薄ければ、地球への完璧な理解と恐れと対策、何でもお見通した作戦があまりにステレオタイプで安っぽい。『ファウンデーション』の未来のお見通し感と似た違和感を感じます。『宇宙のランデヴー』みたく、フリだけで終わるよりはよほどマシですが、ここまで描く必要があったのかな ? テキストで会話できてしまうところも、もう少し説明が欲しいです。

あとは人間が魅力的じゃない点。警察官の史強、楊冬の夫の丁儀、主役の汪淼等々、軽いよなぁ…。

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