本の雑誌 2020年4月号 – 大山顕の名言、マンションポエムはマンションを語らない

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本の雑誌 2020年4月号 (No.442) / 本の雑誌社 / 1000円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「さようなら、坪内祐三」

表紙絵や本棚が見たい!から、座談会、三角窓口、坪内祐三の10冊、沢野ひとしのエッセイや編集後記まで。「本の雑誌」のフォーマットに合わせつつ、重松清と平山周吉の弔辞で挟み、佐久間文子を冒頭に持ってくる「スタッフライター」坪ちゃんへの愛と工夫でいっぱいの追悼特集号。注釈抜きで固有名詞をガンガン登場させながらも通して読めば多層的に浮かび上がる構成も見事で、追悼にうるさい坪ちゃんも天国から満足していることでしょう。

記憶力に優れ、行動力があり、筆も早い。「怒りっぽく、気難しい人と思われていた。」「私としては素直に愉しめませんでした。」等々。

私も面倒くさそうな人だという印象を連載で感じていましたが、それを上回る人間味もまた同時に感じられ、実際、各人の追悼の言葉を読むと気遣いのできる信念の人だったとわかります。杉作J太郎のコメントとか泣かせますし、「猫目」の瀬尾佳菜子のコメントもいいです。

目黒考二と亀和田武の対談は、例えば「偶然が出てくるのは都市小説。田舎に偶然はない(p.44)」とか魅力的なエピソードに満ちています。触れらていないのは「坪内祐三ロングインタビュー」について坪ちゃんが「目黒さん、賭けに出たな。だったら応えてやろう」とスタッフライターを自称するようになった経緯。目黒考二の謙遜とは思いますが触れるべき言葉と思います。

そうそう三角窓口を読みながら思い出しましたが、私も最初に驚いたのがその若さでした。もっと凄い年上のおじいさんを想像していたので、あまりの若さにびっくり。何の写真だったかな。

田代靖久が 8mm自主製作映画で「ぴあフィルムフェスティバル」に参加したとか。彼は2次で落ちたようですが、ふふふ、私が助監督した作品は最終選考まで残り(もちろん監督が優秀だったから)、新宿の映画館で上映、選考されたのでした。福岡からわざわざ出て行ったのに無冠でしたが…。

服部文祥は十二国記シリーズ。新潮文庫の大人な表紙にすっかり忘れていましたが、もともとは講談社 X 文庫ホワイトハートのラノベで、『図南の翼』で北上次郎が「発見」して騒ぎになったんでした。

鈴木輝一郎は変態ちっくなバックアップ。痛い目を見るとこうなります。代替機を買い換えるのも、異なるメーカーのメディアを買うのも。結局それが安くつくわけです。

大山顕はマンションポエムの「ポエム」とは何か。ここでポエムとはいわゆる「詩」のことではなく、「それを語ることで何かを隠そうとすること文章のこと」と定義。あれだけ言葉を尽くしながらマンションポエムは「マンション」を語らない、と、1148物件のマンションポエムのテキストマイニングツール仕分けの結果から導きます。大山顕は本職が写真家らしいのですが、私たちは今、物凄い才能と出会っている気がします。

堀井慶一郎は1899年生まれの3人の研究として川端康成とヘミングウエイと島田清次郎をふざけ倒しながらの紹介。だけど、意外とこれ、坪ちゃんの『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』へのオマージュではとも思ったり。

円城塔が紹介するのは『If Hemingway Wrote JavaScript』。「本書は、作家を紹介し、その特性を反映したコードを並べ、コードについての解説を繰り返していく形で構成される。」理解出来なさそうだけど読んでみたい!! でも原書は2014年。そこから大きく JavaScript は変わっていそうです。

あと面白そうな新刊はル=グウィンのエッセイ『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』と『自叙伝 ジェームズ・T・カーク』

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