本の雑誌 2020年2月号 – 作家の優しさを伝える石本秀一の「加納朋子の10冊」がよかった

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本の雑誌 2020年2月号 (No.440) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

今月号のベストは石本秀一の「加納朋子の10冊」。 「温かくやさしいものに満たされる」作品を書き続けるミステリー作家の存在を丁寧に温かく教えてくれます。作家へのファンレターに添えた日常の謎を返信で作家が解き明かす『ななつのこ』、個々人の問題で卒業できない大学生に寄り添う『カーテンコール!』など、設定も魅力的な上に温かなエンディングが待っているなら、そりゃ読むしかないでしょう。引用される『ななつのこ』冒頭もよいです。

いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか? いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?

特集は「「うらすじ」の謎と真実!」

「うらすじ」とは文庫の裏表紙のあらすじのこと。別の用例しか知りませんでしたが、タモリ倶楽部の命名らしい。さもありなん(2018/5/4放映分「文庫本の裏にあらすじあり!! ウラスジ大読書会」)。本の登場人物紹介とうらすじはまったく読まない派なので特にコメントはないけど、編集者の大変さはわかります。

田代靖久の新連載は、情報センター出版局の星山佳須也の話。情報センター出版局は、椎名誠の初期の本の印象的なカバーしか記憶にありません。若干上の世代の、出版やサブカルが盛り上がる時代の話が始まるのかなと期待。

もう一つの新連載は大山顕のマンションポエム。マンション広告に添えられる荘厳な売り文句を茶化したもので少し前からネットで話題で、連載に「お、おぅ…」と妙な声が出ましたし、内容も予想に違わぬバカバカしさ。海外のポエムまで掘り下げ都市論を展開し、初回から飛ばします。これも期待。

新刊はテッド・チャン『息吹』と穂波了『月の落とし子』の SF 2冊が良さそう。

穂村弘の「旅に連れてゆく本」で紹介された短歌にうなだれました。

開くことなきままわれと旅終えて文庫一冊書だなに帰る

山本徳子

それでも最近は電子書籍があるのでいざというときの備えがあることが前世紀との違いで、持参する冊数は減りました。

これから読む予定の本を紹介されるとスキップせざるを得ず、高野秀行の『ソラリス』、速水健朗『シャイニング』は後回し。後者は『ドクター・スリープ』の準備として再読予定。

風野春樹は構大樹『宮沢賢治はなぜ教科書に掲載され続けるのか』の紹介。内容の面白さよりも、政治や教育や時代に「利用」され続けてきた面が多分にあるとのこと。おもしろい。

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