本の雑誌 2018年1月号 – 佐久間文子の現代小説ベスト10が強い

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本の雑誌 2018年1月号 (No.415) / 本の雑誌社 / 815円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」

1位は遠田潤子『オブリヴィオン』。北上次郎を含む「本の雑誌」編集部が、「遠田潤子」を本気で推しに来ています。まずその作家を雑誌が作ろうとする姿勢が素晴らしい。そして内容をちっとも紹介しないこともまた素晴らしい。
今月号の三角窓口には、国内ミステリーの冒頭にも「登場人物」表が欲しいという投稿がありますが、私はあれが大嫌いで、願わくば帯や袖にも何も書いてほしくない派です。
『雪の鉄樹』を含めて「遠田潤子」の名前を前面に出し、あとは読んでのお楽しみという姿勢は読者を信頼しているからこそ出来ること。この状態で読み始めて、『オブリヴィオン』にどれほどの熱量を感じられるのか楽しみです。

2位は紀田順一郎『蔵書一代』。ずっと年配の指南者だった方が、人生の終わり的なまとめの活動をされるのを見るとツライですね。荒俣宏同様、ずっと不思議な幻想文学を紹介する人であってほしいのに…。
3位は『インターネットは自由を奪う』。腹が立つばかりだろうから読みません。
9位の『茄子の輝き』は今月号の最多登場作品。滝口悠生って初めて意識しました。新刊の『高架線』と合わせて興味をもちました。

ジャンル別ベスト10では鏡明のSFも(『ゲームの王国』『母の記憶』、直行3部作、等々)、栗下直也のノンフィクションも(『石つぶて』『レッド・プラトーン』)良かったのですが、バラエティに富む不思議な話が揃った、佐久間文子の現代文学ベスト10はトータルで強い印象を残しました。

1位の『運命と復習』は叙述ミステリーっぽい感じ。夫視点の甘さが妻視点で裏返されるのだろうなと想像していますが、どうでしょうか。ファンタジー的な『鬼殺し』、ベトナム戦争時、北のスパイが南ヴェトナム軍ととともにアメリカに脱出する『シンパサイザー』等々。

「私のベスト3」では柳下毅一郎が良いです。『パリに終わりはこない』『チャヴ 弱者を敵視する社会』『オクトーバー 物語ロシア革命』。どれも具体的な理想像がありながら壊れていってしまう感じで好み。

新刊では『構造素子』。「パパもこういうの書いてよ」と息子が差し出すのが『ニューロマンサー』と『ディファレンス・エンジン』でやられました。
冒険サスペンスの『サハラの薔薇』。クレイグ・トーマスを思わせるノンストップ型アクション小説のようです。

穂村弘は『火星年代記』を読み進められない話。分かりすぎる…。『ライ麦畑でつかまえて』を20代で読んだけど、もっと早く読みたかったなあと思いましたからね。ただ、いつまでたっても中年男の小説を読む気にはならず、一方で一連の新海誠作品にハマってしまうのはどうしたものかと我ながら…。

もはやただのお節介おばちゃんと化している内澤旬子は(褒めています)、新しいターゲットを見つけて、以下次号。ずっとこの調子で続けてほしい連載。
ちなみにこの連載を読んでいて少しだけ私の意識も変わり、初めてワンサイズ小さい身体にぴったりフィットするシャツを買いました。

堀井憲一郎は『我が心は石にあらず』に書き込んだ人間を真面目に推理します。現代と明らかに異なる時代の読者の純粋な思いに、学生運動って何だったの? 結局意味あったの的な、侘しさや、悲しさや、虚しさを感じました。堀井憲一郎はおふざけの度合いを減らしてから良くなったなぁ。こんなことを読者が感じていると知ったら、また増やしそうな人だけど。

平松洋子が会社に近い「がんぎ」を紹介する後編。そんな店があったかなぁ…くらいの認識でしたが、これは行く。にしんそばを食べる! ちなみに過去に紹介された人形町の福そばには行って、紅しょうが天+温玉を食べました。ほんと出汁がいい仕事してましたし、紅しょうがも口の中に美味しく広がるのね。

新宿ゴールデン街の「bar図書室」。オープンは8時から。席数は5。混んでんだろうなぁ…。
公式ブログ: http://d.hatena.ne.jp/tosyositu/

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