本の雑誌 2016年9月号 – 夏です。

本の雑誌 2016年9月号 (No.399) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「映画天国!」
「天国」というほど特集は盛り上がらず淡々と。柳下毅一郎のプロデューサー本と鈴木毅のダルトン・トランボの紹介だけが良かった。ゲッペルスのプロデューサーとしての悩みとか良いなぁ。
映画関連で行くとハリウッドで唯一SFが分かっていたダン・オバノンが唐突に出てきて驚いたのが鏡明のエッセイ。普通はカーペンターの「ダーク・スター」だと思うのですが…。単なる間違いなのか、主演だからわざとなのか(でもサーフィンはしてないんじゃ?)。気になるなぁ。
ところでどうして古本屋さんにはある一定量の映画本があるのか、以前から疑問です。、書店主はだいたい映画が好きなのか、それとも需要があるからなのか。何故なんでしょうね。

新刊は、ちょっと紹介しすぎだけど、ここまで紹介しないと分かってもらえないだろうな、の『拾った女』。
都甲幸治は『分解する』と『鏡のなかのボードレール』。主に男性作家が築いてきた学問の中で学んだ女性が成人するや自我を獲得し直さなければならない、とか、北海道出身のくぼたのぞみが大学でフランス語を学ぶことの意味を再考したりとか、女性固有の視点にはこれまで想像したことないものだっただけに考えさせられました。
SFは『宇宙探偵マグナス・リドルフ』『筺底のエルピス』、そして『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』。最後は北上次郎だがどうしても『リプレイ』評を思い出すよね。

堀部篤史は最後の「コテージ」。よくある話しといえばよくある話しですが、寂しいですよね、こんなの。逆に言えば恵文社一乗寺店の評判を支えてきたのは堀部一人なわけですから、これから「コテージ」が衰退し、誠光社が盛り上がるのは必然です。恵文社としては自由な場を便宜したのは事実だし、ここがなければイベントも無かったと毎度の主張するのでしょうが、それにしても最後と分かっていて金を取るかね?

栁下恭平は校閲における引用確認。本の感想を書くために今読み終えた雑誌から文章を探すだけでも大変なのに、校閲者をこれを未読の本に対して短時間で行い、繰り返すかのと思うと大変さが分かります。それでもツボちゃんみたいなのに出会うとケンカになるのだろうなぁ…。あ、この2人、いつか対談してほしいわ。

西村賢太の日記連載開始。「野生時代」に3年間連載されていたものと知りました。出版会をプロ野球に例えると角川書店はオリックスで、本の雑誌は広島なのだな。基本は昼夜逆転しているようですが機械仕掛けのような生活(ただし調子が良いとき)ですし、見た目とは裏腹に風呂は入ってて綺麗そう。原稿書きはローテク。下書きを清書し、ファクシミリで送り、バイク便でゲラを受け取り。「月命日」ってもしや…と思って調べるとやはり命日(1月29日)と同じ日(29日)のこと。墓標がリビングにあるのに能登に行くとか、毎月これをやってるの? 「清造資料の整理」が何度も出てくるところが一番良かった。

思い出したけど菊池寛賞受賞のときの記事に、ジーンズで来てる椎名誠に対して「いいよなぁ、あの人は。俺たちはバーニーズニューヨークで揃えたのに…」というコメントがありました。ふーんと軽く読んでいましたが、よく考えれば確かにすごいこと。特に家族持ちにはなぁ…、ということで内澤旬子は「チャンス到来!」このまま連載が終わりませんように。

読者アンケート「この業界小説が好きだ!」が良かった。東大寺大仏建立時の食堂小説『与楽の飯』や『小説王』など「本の雑誌」の初出時に興味を引いた本もあるし、小松政夫自伝『のぼせもんやけん2』も面白そうだ。が、締めの櫻井雄司の『男女7人夏物語』と自身の物語が最高のドラマ。本も読みたくなりました。

入江敦彦は京都ガイド本。やはり江弘毅、北脇朝子、高橋マキ、と人が書くのだなぁと思います。そうなると「ku:nel」は誰だったんだろう?

意外や続編が書かれたのが青山南で『覗くひとのモーテル』について。変態フースの変態ぶりがよく出ているエピソードで、ほんとこれが実写化されたら凄そうだわ。

円城塔は『ガードナーの数学パズル』。これは以前に、もっと内容を突っ込んで紹介していたときから期待していました。風野春樹は患者の家族に延命治療方針を聞くということ。最後の段落とか厳しいが事実。こんな医者に最後を看取ってほしいですね。若島正は『マックスウルの悪魔』。読みました!! 全然わからないけど作者が楽しそうってのもよく分かります!!

堀井憲一郎は相変わらずだけど、最後にいきなり大発見をしたような気がする。大正生まれの作家が少ないのは、単に時代が短かったからという要素もあるが、戦争があったから、と。夏です。

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