スター・ウォーズ フォースの覚醒 – リスペクトと焼き直しの間で

投稿日: カテゴリー

スター・ウォーズ フォースの覚醒
監督: J・J・エイブラムス
Star Wars: The Force Awakens by J. J. Abrams, 2015

見る前

できるだけ情報はシャットアウトして観たかったのですが、それでも次から次へ放映される TV-CM やら町中のポスターやらで色々と知りたくもない情報が入ってきます。どうしても予告は必要でしょうから画面に新しい映像やキャラクターが出てくるのは仕方ないとしても、その名前とかその背景とか必要なのかと思います。

ネタバレ怖さにそこまでするか! 女性オタク漫画「木根さんの1人でキネマ」、スター・ウォーズ回が復活公開中
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1512/18/news150.html

本を読む時も、帯や、カバー裏のあらすじや、冒頭の登場人物紹介や、末尾の詳しい解説等すべて不要というか、あるだけ邪魔をしていると思うので同じですね。

ちなみに以下では一部ネタを割っていますので私と同じような人は注意してください。

これまでの「スター・ウォーズ」作品の感想

フツーのファンなので固有名詞なんてほとんど分からないか、最初から覚えてません。ストーリーもあやふやです。この記事を書くために最小限は調べましたが、ホントはもっとぼんやりしてます。そんなもんです。

スター・ウォーズ

すべてはここから。神。「エピソード4/新たなる希望」とか言われるとお尻がむずがゆくなります。

残念ながら今ではもう、全体的に漂うお金の無さと、特別編の CG の後付け感から冷静には観られません。特にモス・アイズリーへの移動のシーンとデススター突入シーンは特別編チームの頑張り度が高い分、落ち着きません。後者の複雑な攻撃は、オリジナル版の何やってるのかわからない同じようなシーンの繰り返しに比べると、物凄く分かりやすくなっているのすがね。

と、当時の熱度とは異なりますがそれでもなお、神。

帝国の逆襲

「反乱軍が負けちゃって、つまんないよ」と友だちに言われて、劇場に行きませんでした。そんなもんです。3部作中もっともよく出来た作品と評価も高いのですが未だにピンと来ません。劇場版では日本語であらすじが「飛んだ」らしいのですが未見です。しかしこの父親の話って絶対、後付けだよねぇ?

ジェダイの復讐

あくまで「復讐」。公開前は部屋に「ロードショー」の付録のポスター貼ってました。生まれて初めて気合いを十分に入れ、勉強を十分にして観たのに、宇宙シーンや戦闘シーンは少ないし、ミレニアム・ファルコン号を操縦するのはランド・カルリシアンだし、ぬいぐるみがキャーキャー言っているだけだわ、ルークの衣装は真っ黒で悪の使者みたいで、ちっとも活躍しないし、皇帝は弱いし、帝国軍は弱いし、で、物凄い欲求不満。レイアのビキニ姿も非常にイヤラしく感じてスター・ウォーズの世界観に合っていないと思いました(これは今も)。

エピソード1 ファントム・メナス

メナスって何? と辞書を調べるところからでした。タイトルが「恐怖の幻影」という意味だと知って期待した感じとは全然異なり、最後の間抜けなカーニバル風音楽と、取って付けたようなダースベーダーの呼吸音を聞きながら、がっかり感だけで劇場を出ました。

これ「スター・ウォーズ」だよね? と思いながら見ていた延々続くポッドレースシーン。子供が活躍する映画はすべて嫌いなので、ラストの戦いもなんか白けました。ジャージャービンクスも嫌い。合戦シーンの黒澤リスペクト感は分かりますが、CG の軽さはどうしようもなく空虚。冒頭のバトルドロイドの凝った動きは好きでしたが、宇宙船の超流線型ピカピカ感も含め CG は全体に軽く、綺麗すぎました。

クローンの攻撃

エピソード1 の反省からかこの間抜けなタイトルは最高。これですよ、これ。
が、内容は凝りに凝りまくってさっぱり。CG は格段の進歩を見せ特に戦場カメラのような唐突なアップとかアニメのようなミサイルの飛跡とか一々かっこいい。が肝心の話が….。

ヨーダの位置づけも中途半端。かちゃかちゃ動きまわってちゃんばらしたり、戦場で陣頭指揮したりと違和感が半端無く。「帝国の逆襲」より若いから元気なのか?

シスの復讐

と、ここまでずっと期待と失望の連続で、本作品もストーリー的な「つなぎ」と思っていたらこれが超傑作。

冒頭の宇宙船シーンから、敵基地に雪崩れ込みのコックピットから飛び出してライトセーバーで薙ぎ払う。この冒頭シーケンスだけで大興奮したのに、そのまま緊張感が持続したままラストの壮絶なライトセーバーバトル、タトゥイーンの2つの太陽まで一気。力を出し切った作品に心の底から喝采。

エイブラムス監督の「スター・トレック」

私はトレッキーでなく、映画「スタートレックⅡ カーンの逆襲」から「スタートレックⅥ 未知の世界」までを主に「同時上映」で見た程度。それも感心はしませんでした。絶滅したクジラがコミュニケーションに必要、と現代にタイムスリップしてきたり、資源の採掘のし過ぎで惑星体制が滅びそうというソビエトを下敷きにしたり、その脚本のチープさ、頭の悪さに衝撃を受けたものです。

そんな私ですが、リブートの「スター・トレック」には興奮しました。シリーズ物の尊重する部分、変える部分のバランスが素晴らしかったからです。特にスポックを若く、かつ、人間風に設定した発想と実現力には驚きますし、コミカルな部分とシリアスな部分、チープな技術と凝った映像等よく出来ています。極めつけはレナード・ニモイの登場のさせ方、ラストのエンタープライズ号の勇姿とナレーション。この見せ方のうまさよ。

こうしたエイブラムス監督のオリジナル作品へのリスペクトと発展、映画的な面白さと手堅さ。ここらへんが新生「スター・ウォーズ」に対してディズニーが求めたものだと思います。実際、前宣伝では実物大の X-Wing の前で記念写真する監督の絵が公開され、ファンはその分かった感に安心したものです。

そして「スター・ウォーズ フォースの覚醒」

結論から書くと楽しんだ部分、良かった部分もいっぱいあったけど、制作陣が冒険を恐れた結果で内心がくすぶっている。という感じ。もう一回観たら感想も変わるかもしれません。

公開2日目に見ました。
事前情報としては可能な限り抑えたつもりです。たとえば公開後はハン・ソロとレイアが一緒のシーンも宣伝されましたが、公開前には伏せられていたと思います。旧3部作の3人が出演することは知っていたものの、どの程度絡むのかは完全に不明で、このため冒頭「ルーク・スカイウォーカーが消えた。」と来た瞬間、興奮で泣きそうになりました。そこまで受けるのか、そこまで有機的に関連するのか、と。直後、双眼鏡シーンでアラビア数字が出てくるバグがそのままで期待は膨らみます。

一方でストームトルーパーが輸送機内で揺れ、血を流し、指揮系統がありと戦争モノのフォーマットをしっかり描きます。ここらで一瞬、続編パターンの「エイリアン2」路線か? という考えが頭をよぎりす。実際、今回の作品で一番素晴らしいのは飛行シーンや、空中戦と地上戦の融合などの戦闘シーン。タイ・ファイターの爆撃で地上が吹っ飛んだり、X-Wing のドッグファイトの結果が地上に影響を及ぼすなど、とても難しい合成技術でしょうが完璧にこなします。技術的には「アベンジャーズ」等のアメコミ映画で鍛えられた部分かもしれませんが、一段も二段も優れていますし、印象的です。「トゥルーライズ」でヘリコプターからの機関銃連射により、遠くの海上の水しぶきから手前のビルへの着弾に繋がるシーンや、「クローンの攻撃」での戦場報道のようなシーンに並ぶ革命のシーンでした。

この後も順調に続き、途中はリスペクトとオマージュの山です。砂漠で朽ちたスター・デストロイヤーやAT-AT、ファーストオーダー戦艦内の色調、ミレニアム・ファルコン号の照準と兵器、CGチェス、フォースはまやかしというハン・ソロの台詞等々。時代設定上、仕方ないという言い方はできるでしょうが、古いファン向けのオンパレード。
そんな中、レナード・ニモイ同様に、役者の登場のさせ方はさすがです。ミレニアム・ファルコン号、ハン・ソロ、ライトセーバー。

ところがこれがだんだんおかしな方向に進みます。リスペクトが焼き直しになり、オマージュが冒険心の無さになります。たとえば酒場の女主人。ヨーダまんま。何故そんな口調で似たような台詞を言うの? なぜそんな造形にするの? と疑問だらけ。そもそもが酒場で、これってモス・アイズリーの酒場とエイリアン、バンド、ならず者まで同じ。その前のカイロ・レンがボイスチェンジャー使ってたり、マスク被ってたり、皇帝みたいなのが出てきたりとなんかな。

しかも話がここらに至って何の脈絡もなく新デススター登場で、唖然呆然。同じようなデススター攻撃と同じようなシールド解除と同じような反乱軍基地。「I’m your father」こそないものの同じような対話場面、…。

エイブラムス監督はトレッキーでなく、スター・ウォーズファンらしく、そこらへんでファンだからこそ変えられなかった部分があったのかもしれません。ちょうどスポックに恋人役を設けたような思い切った設定と言えばいいか。

エンディングは評価します。あれしかない、という流れの持って行きかたですし、期待させたとおりの結果で幕引き。空撮も含めここは満点でした。それだけに後半の新デススター絡みのシーンは全部残念でした。何の根拠もありませんが、あとから無理やり付け足したんじゃないのか? 林間でのライトセーバーでの戦いなど独立しているから、どうとでもつながるし…。

もう一つ、キャラの描き方も浅さが目立ちました。レイ、フィンは合格ですが、BB-8など演技しすぎで過剰。「可愛い?」と毎回自分で言っているようで、何だか LINE のスタンプみたい。カイロ・レンの怒り狂うシーンも同様で、これまでの怒りの表現はもう少し演出は抑えていたはず。チューバッカが起爆装置をテキパキ付けていくシーンや悲しみ嘆くシーンも違うような。親子関係のネタをあっさり割った部分を含め、そう、どれもがディズニー的なわかりやすさ。

冒頭、20世紀フォックスのファンファーレをシンデレラ城と「星に願いを」で置き換えなかったものも、至る部分でディズニーが口出しした結果、なのかなぁ。

(追記) 「最後のジェダイ」

スター・ウォーズ 最後のジェダイ – 予想を裏切る展開

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です