本の雑誌 2013年5月号 (No.359)

本の雑誌 2013年5月号 (No.359) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

 今号で一番面白かったのが読み物作家ガイド。伊坂幸太郎が島田荘司の10冊を紹介しています。私の『占星術殺人事件』の本格の人というステレオタイプな 認識に対して、その前にこっちを読んでおけば、もっと面白くなるよ、と優しくガイド。短編に始まり、長編でも読みやすいものを揃えて、その上で大ネタの紹介 をチラホラと。上手いですねぇ。

特集は「やっぱり人情ものが好き!」。背景やエピソードを少しだけ紹介したり、対談では肝の部分を「(削除)」なのに、それでも泣きそうになるから困ります。山本周五郎『かあちゃん』、浅田次郎『天国までの百マイル』等々。

以前の特集を受け、しばらく前から始まった榎本文昌の文芸誌読み比べ。トヨザキ社長が「本の雑誌」読者にガイブンを近しくしたように、次第に文芸誌 の方向性やテーマやバリエーションが見えてきて、それまでの正体不明な感じがなくなってきた気がします。是非、このまま続けてください。
逆に終わってしまったのが渡邊十絲子の新書紹介。理系的なセンスで売れ線以外の、特に職人や研究者のプロの技を熱く取り上げる姿勢は好きでした。また戻ってきてくださいね。

円城塔のエッセイは、現在の電子書籍リーダーが読みづらいのはプログラムが悪いのであって、改良していけばいい、と。さらりと、プログラミング言語論もあります。風野春樹は冒険小説ばりのフィクション『マルタ島大包囲戦』の紹介。木村晋介のオウムや地下鉄サリン事件のまとめは非常に面白いものの一体 どこに向かっているのかが分かりません。単なる総括に終わると思えないのですが…。

新刊ガイドでは北上次郎による澤田瞳子の推薦の弁と、ねっとりした佐久間文子の紹介がよかったです。矢口誠が高くて買えなかった『円谷プロ全怪獣図鑑』の500円はさすがに5000円の間違いのようで。

 

 

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