本の雑誌2012年10月号 (No.352)

本の雑誌 2012年10月号 (No.352) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「国書刊行会の謎と真実!」。
単純に新潮社、早川書房と続く出版社訪問でない、国書刊行会そのものを、想像の斜め上を行く魅力と真実でたっぷり楽しめる好企画。「世界幻想文学大系」と「ダールグレン」とカンコさんしか知らない人間にとっては驚きの連続です。少数部数の高価出版が成り立つ背景には宗教や地方公共団体による強い母体があってこそなのだですね。社の方針は「今月の一冊」で紹介された『出版屋の考え休むににたり』の願望にも合致しています。特集に合わせて裏表紙には貴重な出版社広告が。また関連して40周年特設サイト(http://kokusho40th.info/comics.html) もあります。

続くページの「この作家にブレイクしてほしい!」。「本の雑誌」ではおなじみの作家でも世間の認知度はまだまだ、という例は多数ありますので、そうした作家の代表作やブレイク作を改めて紹介するのはありがたい。応援の意味で選出された三人を書いておくと山本幸久、早見和真、豊島ミホです。

新刊めったくたガイドは佐久間文子と大森望の紹介本。金星の日面通過は最近も話題でしたが、個人的には金星が太陽の前をよぎっただけで何が嬉しいん? と思っていましたし、ラヴクラフトに出てきた時も簡単にへぇと思いましたが、北上次郎推薦の『金星を追いかけて』、で18世紀から世界中で大騒ぎだったことを知り、ますます不思議になりました。同じく片平なぎさのアホアホ本はきっとアホなんだろうけど、今ひとつ面白みが伝わらないのは写真が小さく白黒だからでしょうか、残念。

都築響一は写真にびっくり。勝手に線の細いサブカル野郎をイメージしていたので、その真反対の風貌とは。
装丁の祖父江慎と編集の川崎ぶらの仕事はまとめて欲しいですよね。津野海太郎の防御的蔵書を減らす法は次号に期待。手塚治虫の新宝島誕生の話と聞いて、あーあれね、と思ったらもっと深い話は小野耕世。良いです。

読み物作家ガイドは篠田節子。勝手にSFホラーの人というイメージでしたので「至高点に到達する者と、至高点が見えながら自分の手では届かない者」をテーマとする『神鳥』『贋作師』『カノン』『ハルモニア』の内容紹介に驚きました。

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