本の雑誌11月号 (No.317)

本の雑誌 11月号 (No.317) / 本の雑誌社 / 648円+税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「昭和の文学が面白い!」冒頭いきなり雑文家(エッセイスト等)から入るところが本の雑誌っぽくてとても良いです。座談会自体も選者(亀和田武、坪内祐三、目黒考二)の雑文への愛が感じられ、かつ、結果の番付も見ていて楽しい、という珍しい例。続く文学入門、イケメン作家選、文士の酒場探検と、筆者とテーマがピタリと合い特集を盛り上げました。好企画!!

新刊紹介で一番気になったのは北上次郎が推す野球小説二作、川上健一『ナイン』と堂場瞬一『ラストダンス』。変化球か直球勝負かとスタイルは違えど、最後に強烈な感動が待っていそうで期待大です。次に期待するのが橋本治『巡礼』。小説の構造や流れ以上に、トヨザキ社長の橋本治解釈や本書の読み込み、展開などに興味を持ちました。

エンタメ・ノンフ枠で紹介されるキム・スローン『英国人が見た新世界』も、ゲリー・ケネディ&ロブ・チャーチル『ヴォイニッチ写本の謎』も無茶苦茶楽しそうです。その高野秀行は「名前変更物語」で戸籍名の変更の一手段を紹介。流行り(?)の夫婦別姓の議論には行かず個人的にちょっと残念でしたが、意外やまだ続くそうで、何か出てくるかなと期待しています。「「1Q84」24時」は永江朗によるバカ売れ春樹本発売前後の業界レポート。何故こんなにも売れたのか、という分析がないまま(敢えて言えばテレビ報道?)、右往左往している現場の様子が描かれ、混乱ぶりが分かります。同書を料理で紹介するのは吉田伸子で献立は青豆のスープ。今月書いた人を読んでもフツーに料理が上手そうです。「ミーツへの道」は初めて社を辞めることへの言及。つまらない会社人事のせいで辞めることになるんでしょうかね、やっぱり。

その他では、初野晴『初恋ソムリエ』、高萩宏『僕と演劇と夢の遊眠社』、ジャック・エル=ハイ『ロボトミスト』、安藤優一郎『娯楽都市 江戸の誘惑』が面白そうでした。ところで今月号は索引がなくとても不便でした。定期購読で同封の「本のちらし」もいい加減な出来。実際の企画は炎の営業・杉江さんだったらしいので業務多忙のためでしょうか。だったらいいけど。

さて青山南や川上賢一が言及しているアマゾンのキンドルですが日本でもサービスが始まりました。当初は洋書のみですがそのうち和書も扱うのでしょう。ミステリーを読んでいて前の方での誰かの発言を検索するとき便利かな、と思ったり。<-邪道

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