本の雑誌4月号 (No.298)

本の雑誌 298号 シシャモじゃんけん号 (298)
本の雑誌 4月号 (No.298) / 本の雑誌社 / 530円 (505円)
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

読みごたえのある内容で、大満足の号です。

冒頭「今月の一冊」はロックのガイド本として充実の山口隆「叱り叱られ」。山下達郎、大滝詠一、岡林信康、かまやつひろし、佐野元春、奥田民生との対談集ですが、ただでさえまともに答えてくれない面々に、面倒くさい質問をして、予想通り軽くあしらわれ、それでも引かない対談とか。うーん、面白そう。

特集は「青坪アメリカを語る!」。先月号から期待していた内容ですが、昨年末に行われた公開対談なのですね。聞きたかったな、がっくし。で、内容はケルアックを題材に50年代アメリカ文学を掘り起こすというもの。若者が元気に見える60年代は、単に50年代のサブカルの「サブ」が取れ、一般にも認知されるようになっただけ、という発見(?)には説得力があります。続けて青山南のエッセイを読むと展覧会に行ったことが分かる趣向もいいです。

江弘毅の「ミーツへの道」の時代は1989年。自分がぼんやり暮らしていた学生時代に、こんな面白そうなことを起こしていた人間が地方に(大阪だけど)いたのだなぁという純粋な驚き。と、同時に、80年代もすっかり歴史なのだなぁ、という感慨。最近も10代の「わたし、昭和に生まれたかったですぅ」という発言に触れ、どうしたものかと思ったのですが、これって、ちょうど津野海太郎の「サブカルチャー創世記」の時代(1973年)を、不思議な憧れを持って眺めている私と変わらないのかもしれません。

鏡明は共産圏SF再考。「ストーカー」のゾーンに閉鎖された社会からの資本主義への憧れを見る、という解釈は目鱗ぽろり。俄然読み返したくなりました。あちらの読者には当たり前のことだったのかも。

他に中野美代子の下種な視点(ほめ言葉です)、繰り返されるスティーヴン・ミルハウザー「ナイフ投げ師」への賛辞、明治維新から四半世紀後の幕臣達へのインタビュー記録「旧事諮問録」、一切妥協なしの雑誌「自遊人」、今どきの恋愛に存在しにくい行間を持ち込むための二重生活マンガ「会長はメイド様!」など。

シーナさんは本の話しは出てきたけど、うーん、やっぱり、写真と短いコメントの連続というのは少し寂しい。以前の、写真抜きの、フツーのお話しスタイルに戻して欲しいです。

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