グランド・バンクスの幻影

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グランド・バンクスの幻影 (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C・クラーク / 山高昭訳 / ハヤカワ文庫SF / 640円+税 古書店で320円
カバー: 浅田隆
The Ghost from the Grand Banks by Arthur C. Clarke

2012年のタイタニック号沈没100周年に合わせて二つのグループが引き上げを競う。一つはガラスで財を成すパーキンスン一族と、新種のフロントガラスで成功したロイ・エマソン。折れた船体の前部を数百万のガラス玉で持ち上げ、フロリダまで曳航し公開する計画。もう一つは日本ターナー社カトーと、コンピュータの映像加工技術の専門家クレイグ夫妻による船体後部を氷で包み浮上させる計画。これを国際海底機構のジェースン・ブラッドリーが監視する。
海底地震と、その後の事故によりブラッドリーは死亡、タイタニックも海の底に沈む。

クラーク老いたり。
マンデルブローを嬉々として説明するのがこの小説の主眼と成り果てては、クラークのこれまでの海や宇宙の深遠さ、壮大さに慣れ親しんできたファンとしてはただただがっかり。
タイタニック号やその深海を巡る描写にスケール感や思い入れの吐露は欠片もなく、会話中心の、あるいは科学解説記事の素材そのままの引用中心の、とてもSF小説とはいえない出来。単独名義にこだわった理由も分からないではないですが、これならジェントリー・リーに手伝ってもらった方が、あるいはいっそ、執筆を止めてしまった方がどんなによいか。
わずかに最終章「44 エピローグ 時間の深淵」におけるさらっとした宇宙生命体の描写には往年の姿を見られ嬉しかったけど。

atachibana

立花明 - 東京都在住、IT系企業勤務。 ブログでは本や映画の感想を中心に書いていますが、サイト構築の技術情報もたまに。WordPress Codex を中心に活動中。 連絡先はこちらです。

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