本の雑誌 3月号 (No.321) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「いま書評はどうなっておるのか!」。事前の煽りがすごくて期待したのですが、残念ながら内容は今一つ。トヨザキ社長の、いい加減な書評家にダメ出ししたい真摯な態度や実名を挙げての批判は分かるのですが、あまりに Amazon の書評やダメ書評家を気にし過ぎ。読者はもっとちゃんと見ているので、いつものトヨザキ節で書評してくれればそれで十分、と思います。その点、北上次郎の霜月蒼を褒める姿勢は分かっているな、と。坪ちゃんは痛烈な書評委員批判(『森有正先生のこと』は朝日で書評されたのかしらん?)。この後に、永江朗の記事を読むと笑います。
特集はかなり欲求不満だったのですが、次の書評ページでトヨザキ社長が『煙滅』を紹介。訳者への賛歌や関連書籍の紹介も触れつつ、本書の魅力を存分に語る、これぞいい見本という内容。対談よりもよほどいまの書評がわかった気になりました。対象を読みたくさせる書評という意味では沢野さんの室生犀星紹介も良かったです。雪と金沢のイメージが頭にこびりついて離れませんし、絵の効果も抜群です。渡邊十絲子の新書紹介も、どちらかと言えば地味な研究者視点を丁寧にすくい上げるのが上手く、いつも新鮮な興味を与えてくれます。今回の紹介は電車。そんなオタクネタはどうでもいいじゃん、と微塵も思わせない所がうまいです。
餅は餅屋で高野秀行が『「地球の歩き方」の歩き方』を紹介。青山南は『グレート・ギャツビー』の訳業に触れつつ村上春樹批判(だよね?)。本当に嫌いなんだなぁ。江弘毅の「ミーツへの道」はいよいよ佳境、というかだんだん寂しくなってきました。理不尽極まれり。