本の雑誌2月号 (No.320)

本の雑誌 2月号 (No.320) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

今号もまたかっちりした号でした。無駄な執筆者もいなければ無駄な書き散らしもなく年末進行の中にあって編集の熱心さを感じます(小学生書評家はアヤシーが)。出版社の広告も多数入り、裏表紙にはエリエールも付き、これでしばらくは安泰…ですよね!?

今号で一番良かったのが沢野さんの金沢慕情。ここ数カ月、ずっと上手いなぁと思ってましたが今回は特に。ちなみにその前の木村さんの小説も本人が謙遜するほど悪くないです。次が楽しみです。逆にシーナさんのはちょっとなぁ…。

特集は「読書手帳をつけよう!」。編集部浜田の大方の読者と同じくなかなか続けられない現実の姿を紹介後は理想の読書手帳、実際に使われている手帳、と並べていく構成は自然でよかった。読書メーターを始めとする周辺グッズの説明も丸。浦さん入社以来ネット系のネタの扱いには安心感がありますね。FAXが導入されてお札のイメージを送ってみたりと、元がひどかったという気もしますが…。

白川充インタビュー。やりたいことが後から後から溢れてくる好奇心と、それを実現できる力量が羨ましかったです。『増大派に告ぐ』は各所で評判いいですがトヨザキ社長の手にかかるとまた違った風に感じられます。少なくとも「日本ファンタジーノベル大賞受賞作」から受け取るヤワな感じはないですね。3万円使い放題の篠田節子は、写真やリストからはしっとりした感じですが三角窓口の鈴木輝一郎のハガキを読んでからだとそれが微妙に変わって良し。

プロレス本特集はおたく話に終始してしまうところをレフリー役の高野秀行が絶妙な合いの手(=質問)を入れることで、かろうじて一般向けに。でも興味ない人にはまったく興味ない世界だろうなぁ…。個人的には初期の「紙のプロレス」にもう少し触れて欲しかったです。プロレスファンでなくとも非常に人気のあった雑誌でした。

古屋美登里の授業はいつも面白そうですが今回のテーマは「友情と裏切り」。国や時代は違えど、このどうしようもない感じは同じなのだなぁ、と。ただこれタイや日本だからであって、中国やインドのような常に大勢を押しのけて生きていかなければならない民族はどうなんでしょうか。

翻訳ミステリー大賞は、翻訳家を対象とした「本屋大賞」。SFや純文のような文体そのものが凝ったものならともかくミステリーだと翻訳の善し悪しより、内容そのものの面白さで決まりそうで、本当に今後、”翻訳者が選ぶ意義”が出てくるのか疑問でした。もちろんそんなシロートの疑問を超えた高いレベルで大賞が成りたって欲しいですが。

江弘毅と高野秀行を並べたのは内田樹つながりかな。その『日本辺境論』は日本人を辺境の民と位置づけ国際社会の中で、ただ付いて行こうとばかりしていると指摘。これを高野秀行が、状況が分からないのに人を殺し続けたミャンマーのゲリラ兵士やポルポト派の兵士と変わらないと同調。当たっているだけに指摘が痛いかも。

青山南は村上春樹の翻訳に微妙にケチ。が、付けたくなる理由も分からないでない。

他にニール・ゲイマン『壊れやすいもの』。山崎まどかの推薦本、『ニセドイツ1・2』、『細胞発見物語』など。

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