本の雑誌 7月号 (No.325) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「電子書籍の時代がくるぞ!?」。正直あまり期待していなかったのですが、多面的な人選と意外な視点、共通するメッセージ – 要は電子書籍の流れをどう楽しんでいくか – 更には iPad でも読める『死ねばいいのに』の広告まで、きっちりした特集でした。中では寄藤文平インタビューの、コンテンツまで踏み込んだデザインという視点、しかもそれをデザイナー自身がやろうとしている姿勢に全く驚きました。デジタルで壊滅した音楽業界からはモノへの回帰の声ですが、書籍の場合は高価な本ということになるのでしょうか。これは鼎談にも登場された竹熊氏の持論です。ただ彼はブログでもっと刺激的なテーマを取り上げているのに今回は少々トーンダウン、かつ、毎度の議論に終始していて残念。「電子書籍時代の出版社の役割」など興味のある方はどうぞ。、既に色々な所で無断引用されていますが…。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-9fd2.html
ところで出版社や取次ぎの視点がないのは、「どう楽しんでいくか」という視点に欠けた利権の議論ばかりしているから敢えて外した、と見るのは意地悪すぎでしょうか。
エンタメノンフでは高野秀行が最終回。お前こんなバックボーンがあるなんてずるいよ、と文句も出てくる座右の書。この上でバカやってんだから強いです。風野春樹は『失われた建築の歴史』、宮田珠己は「瑞原氏城下絵図」とどこか似たような面白い話が揃いました。連載では『サッカーストーリーズ』がここ最近話が動き目が離せません。他に北上次郎一押しの2作品など。新しく登場した書き手さんが、どなたも落ち着いている上に密度の濃い内容ということもあり全体として非常にかっちりした印象の号でした。こんなときは椎名さんのエッセイも冴え、木村さんの小説を書き手側の視点で分析し、コンピュータ信者の校正にケチをつけ、そこからまた木村さんに戻ってきてと、動きのある内容でした。
広島市内出身者は沢野さんが紹介する都築響一展覧会ポスターの広島太郎に注目。私は他県の出身ですが何度か話を聞きました。まだ生きていたのね。