本の雑誌 2014年3月号 (No.369) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「造本・装丁は楽しい!」。平野甲賀、日下潤一、多田進らの熱い思いも良いですが、「胞子文学名作選」関係者の苦労話、特に各社の技術者魂で困難を乗り越え、スケジュールと予算に打ち勝つあたり、プロジェクトXみたいに読みました。さぞや現場は大変だったでしょうが、それもこれも胞子文学のためですからね、改めて企画者の実行力が素晴らしいです。
入江敦彦は「作家が訳したヒッピーの夢」として、五木寛之訳の『かもめのジョナサン』と倉橋由美子訳の『ぼくを探しに』。「捏造とはいうまい」と、好意的な紹介になっていますが、要はヒッピー文化とラリった感じを掴みきれなかったのですよね、ちょうど大瀧啓裕が山形浩生に指摘されているように。分かってやっているのと、分からないでやっているのとでは、だいぶ違ってしまうと思うのだけど、どうか。
一転、橋本治の10冊ではファンならではの思いを正直に記していて「ベストセラー温故知新」とは別人。そのスタイルもベースは『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』と種明かしまでしてくれ、その好きさがよく伝わりました。
宮田珠巳は去年拾った石ベスト3。写真入り。そりゃそうだ、写真がなきゃわかりません。って、あってもこれがビミョー。もうどうにでもしてよ、という世界です。
内澤旬子は高野秀行を連れてバーバリー、ヒューゴ・ボス、バーニーズニューヨークへ。むちゃくちゃ盛り上げて以下次号。ほんと毎月楽しみで一番に読んでいます。
トヨザキ社長は、先月号でも佐久間文子と柳下毅一郎が取り上げた『地図と領土』。
ル・カレ『誰よりも狙われた男』がハヤカワ・ノヴェルズで出ることに感慨を抱くのは、矢口誠。分かります、その気持ち。
最後に『季刊・本とコンピュータ』を創刊したのが津野海太郎と知って驚き。ときどき言及していましたが、まさか創刊者だったとはね。失礼だけど、もっと若い人が創刊したんんだろうくらいに思ってましたわ…。
定期購読者に隔月で送られてくる「本のちらし」の町田真穂「ほろよい日誌」は、連載開始から楽しんでいますが、1月30日(木)のエッセイはまたさらに良いです。いいなあ。