本の雑誌 2014年4月号 (No.370) ぶっつけ旅はるばる号

本の雑誌 2014年4月号 (No.370) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「図書館を探検する!」。珍しく冒頭の「今月の一冊」は否定的。取り上げた『つながる図書館』は、課題解決型図書館を紹介しますが、そんな市民サービスの自慢をするより、蔵書を自慢しろよ、という非常に真っ当な意見。また新潮社の石井昴は同じ本を取り上げた上で、「(卵を生む)鶏を殺さないで欲しい」と現在の無料貸本屋状態を訴えます。津野海太郎も「図書館利用は無料」という理念を守るために利用者、図書館側が意識しなければならないことを伝えます。個人的には貸し出されるごとに税金からいくばくか還元するスウェーデンスタイルしかないのでは?

武雄市図書館の試みも、伊万里市民図書館の試みも、私は同じように評価します。特に話題になることの多い前者は、本のない=使えない町立図書館しかなかった私には夢のようで、個人情報の扱い等考えるべきはありますが、プラス面の方が大きいでしょう。

 

椎名誠の紹介する映画「オール・イズロスト」面白そうですねぇ。まったく話題になった記憶が無いのですが、2時間の上映中、セリフもナレーションもなく、ただ海で男が生き抜く映画で、主人公がロバート・レッドフォード。相変わらず出演作の選び方が素晴らしいやね。

内澤旬子の「着せ替えの手帖」はついに高野秀行のスーツ姿を掲載。うわー、ほんとに中田だわ。これ読んだスーツ難民はみんなバーニーズニューヨークに行くね。

参照URL: 高野秀行のブログ「9月30日ドキュメント」http://aisa.ne.jp/mbembe/archives/3552

北上次郎はノンフィクションを 2本。『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』と『直木賞物語』。後者にはきっと直木賞に対する書店員の不満から生まれた「本屋大賞」も出てくるのでしょう。その頃の直木賞より、最近はかなり良くなったイメージがありますが。

津野海太郎はありがちな世代論ですが、根底には若さや柔軟さを感じます。なぜか。『道化師の蝶』を「面白い。どこが難解なの?」と言い放つ人です。石原慎太郎とは器が違います。また、紹介された樹木希林の発言も素晴らしいです。

風野春樹は『セラピスト』の中の風景構成法という治療法について。彼のエッセイで度々提示される問題に、人間の精神という、文化や言葉と密接に結びついた分野での病気の治療法が、西洋の文化や言葉に根ざした治療法一辺倒になっていて、ほんとうに良いの? というものがあります。もちろん、そうじゃないよね、と言いたいのでしょうし、私もそう思います。

柳下毅一郎が紹介するのは衝撃的なミャンマーの刑務所写真集『Prison Camps in Northern Myammar』。絶望的な状況を見事に表す写真で、この囚人にヘロイン中毒の子供がいないことを願うばかりです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です