破滅派 20号「ロスジェネの答え合わせ」

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破滅派 20号「ロスジェネの答え合わせ」
破滅派 / 1000円 / 2023年11月の文学フリマにて購入

諏訪靖彦「爆ぜる 」

親と実家に暮らし、音楽活動のためだけに働いていた俺に、父親が倒れたと連絡が入る。一夜明けた病院で、母親を残し、一人で悲嘆する俺。退院後、父親は復職に失敗し、俺も会社を辞める。

背景に就職氷河期はあるものの、自己弁護は一切なく、淡々と「頭が悪かった」「最低な行為だ」「逃げ出した」。言い訳さえ封じるところがロスジェネなのか。読み返すと、爆ぜる直前の、なんとか元に戻ってほしいと願いながら、どこか逃げている母子の様子も辛い。
ただバンド活動と元カノと金髪にしっかり決着をつけ、航空券とビザを準備して、タイミングを見計らって逃げているようにも見えはするが。

松尾模糊「ライフロープ」

23年前、バンドの絶頂期に自殺した加藤弧盤を語る、家族やバンド仲間をつづったドキュメンタリー風の作品。

「セロトニン」の歌やインタビュー中に他のメンバーの発言を確認するところとか、ドラマか、あるいは漫画で観てみたいなと思いました。

高橋文樹「ロスジェネ年表 」

IT系のネタが多い年表を眺めていると、一体私はこの50年間、何を見てきたのだろうという気になります。何となく、でも、普通に必死で生きてきて、知らないうちに日本がトップでアゲアゲだったのが、いつの間にか凋落し先行きを見通せなくなっている。JavaScriptをオフるように言い渡されていた時代から、いつの間にかネット全体に行き渡る技術になっていたよう(今にして思えばGoogle Mapかなぁ)。

新入社員数の激減という形で就職氷河期を知ってはいても、その向こう側に将来ロスジェネと呼ばれる世代が生まれていたとは想像すらできませんでした。

我那覇キヨ「俺のはなし」

格闘ゲーム『ジョジョ』にのめり込み、氷河期の中、IT企業に就職してライブドアショックに間接的に加担する。

私の目の前を流れ去ったものの1つにゲームがあり、結局ドラクエもポケモンもやらないまま今に至っています。何となく「頑張っても意味ないしな」と、軽視していたら、豊潤な文化に触れないままになってしまいました。アニメもそう。エンタープライズでない、オープン系のネット技術もそう。かと言ってこれからリカバリしようという気もなく。見る目がないんでしょう。
後半のマネックスショックはものすごい裏話の気がする。
途中のインド旅行は『深夜特急』に憧れて(上の諏訪靖彦でも言及がある)。

諏訪真「若者へ。お前達にクソの始末をさせる気はない」

対談が本当なら、筆者は本物の宗教二世(幸福の科学)。と書くと重いし、タイトルも過激ですが、実態は冷静で簡潔な時代の分析。非常に面白かったし、納得感もありました。派遣も、構造改革も、ネオリベも、誰か単独の思惑でなく、時代の流れや空気だったのはまさにそのとおり。伊丹万作が戦後嘆いていたように戦争を支持したのは軍部だけではありません。
宗教二世への批判も鋭く、これは本当に教えを信じていたからだと思います。

曾根崎十三「文を付ける」

ロスジェネ世代のバイト店員と高校生の私。私はあなたと仲良くなりたいと思っているが、あなたに私は見えていない。私は植木鉢の中のあなたの爪に水をやる。

一方的にわたしが押しつける感情を受け流す体温の低い様が、ロスジェネのある層と被ることは容易に想像がつくし、時代が違えば私もこうなっていた気がします。

小林TKG「転居依頼」

「転居依頼票」が届いた住人は突然、消えてしまう。ロスジェネ世代を中心に消えていく本当のロスト・ジェネレーション。対抗して高齢者の「能力者狩り」も始まる。

多弁な語りがユーモラスな話を盛りたてました。

Juan.B「ロスト・ジェネレーション・ジェネレーター」

私は派遣会社を辞めて、コロナ禍の中、フードデリバリーの配達員を始める。トー横での待機中に私設のマスク警察と配達員で騒動が起きる。

こんなにもコロナ禍の惨状を忘れているんだなと思いながら読みました。

河野沢雉「ぼくらの一年戦争」

1年前失職し、家族も失った安室は YouTuber 麻布亭のロスジェネの反乱を眺めている。

こども食堂での女の子との会話がとてもいいし、許そうとした罪の話はもっといい。

波野發作「異世界市長はデッキ構築の夢を見るんか」

異世界に召喚されたユージ市長は、「闇の数学博士」マーモット議員とTCGベースの論戦を行う。

互いの主張だけでも十分おもしろい (特にマーモットの話し方)ところに、不思議なカードのやり取りが、TCG を知らない私にもスピード感や緊迫感を与 ました。トリックも借りやすいし、ラストもいいわ。

大猫「ロスジェネはつらいよ 寅次郎涙の茜雲」

昔、映画を1本観たきりの寅さんで、すっかり忘れてしまいましたが、きっとこんな話なんですよね。キャラの出し入れも台詞も凄いし、寅さんのテキヤの売り口上も凄い。典型的なストーリー立てに、昭和とロスジェネをかぶせて、一気に幕。うますぎる。

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