本の雑誌 2020年9月号 – SNSネタをきっちり特集化してます。

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本の雑誌 2020年9月号 (No.447) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「つぶやく出版社!」

ワープロ専用機や FAX など文明の利器の導入のたびに大騒ぎしていた「本の雑誌」が Zoom で対談して、リモートワークで編集して、今号では SNS を題材にするんだから時代って変わるんだよなぁと改めて。欄外の的確な注釈も含めて良い特集でした。

で、ページにはおなじみの Twitter アカウントがズラリと揃いました。Facebook のクローズさ、Instagram のビジュアルさよりは Twitter の楽屋オチ的テキストスタイルが出版社アカウントには合いますね。ただそこは遊びの利用ではなく商売。宣伝すること、バズること、売上につながることへの姿勢がシビアです。これからは応援のため積極的にリツイートしようと思います。
ところで p.29 の橋本輝幸の SF ページは最初見た時、p.28 からの続きと思いシンポ教授はテリトリー広いなぁと思ってしまいました。ページのレイアウトがイマイチでは?

高野秀行は『宇宙消失』の続き。小説自体の解説もわかりやすかったし、「ノンフィクションを書くことは量子力学的な作業である」と自分の執筆にまで昇華して素晴らしかったです。

田代靖久は星山局長直伝の門外不出「企画の三要素」をチラ見せ。知りたいなぁ。ところで杉江さんは営業と思っていたのだけど、編集担当もやるのですね。

椎名誠の若菜晃子『旅の断片』の紹介自体も涼しげで良い。本屋で触ってみたいです。

新刊では小財満の海外ミステリーがどれも強い。『発火点』『博士を殺した数式』『念入りに殺された男』、そして『あの本は読まれているか』。冷戦下のソ連において『ドクトル・ジバゴ』を流通させようとするCIAの実話をベースにした作品、って情報量が凄いです。

大塚真祐子は芥川賞を上品に総括しながら石原燃「赤い砂を蹴る」が落選し、遠野遥「破局」が当選したことに不満を述べる技を披露。個人的には高山羽根子「首里の馬」が良さげ。

田中香織が紹介する漫画は牡丹もちと『コーヒームーン』。「今日」を繰り返す時間物で「世界の結末」があるそうです。面白そう。

大山顕のマンションポエム、今回はポピュラーミュージックと絡めましたが難しそうなネタをきっちりまとめています。オチが最初にあったかな? と邪推。途中の結婚式場ポエムとか15年も前の女性誌とか情報収集が広くて深く感心するし、タイトルの「終わらないラブソングを歌う街」というのも良いですね。ちなみにこの街は柏と湘南です。

宮田珠巳の本のパターンわけに納得。そうそうだから捨てられないんだよ!

鏡明 支倉使節団。確かにスペイン側からの視点の小説がほしいし、その前にこんな実話があったのを知らなかったのでそのネタだけでも読みたいと思いました。遠藤周作『侍』。

平松洋子の「そばですよ」はこれまでの楽しく美味しく微笑ましい話が一転。ただひたすらに暗く厳しい話に。どの媒体が伝える苦しさよりもしんどさが伝わる。だけでなくそこを乗り越えようという強い意志も感じて、相変わらずうまい。

堀井慶一郎はおふざけの中できっちり太宰を戦争前から戦争中のものがよく、海外翻訳者が流行らないのを嘆いています。

読み物作家ガイドは小川一水『天冥の標』の星雲賞に合わせたかのよう。『時砂の王』が圧倒的によさげでこれは読む。

次号は「この机がすごい!」。職場の机か、自宅の机かわかりませんが、どっちでも期待!

typo: P.118 中段 右から9行目 場合よっては -> 場合によっては

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