本の雑誌 2021年10月号 – 定年後も本を読む

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本の雑誌 2021年10月号 (No.460) / 本の雑誌社 / 750円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集は「定年後は本当に本が読めるのか!?」

楽しみにしていた特集ですが、薄っすら予想していたとおりの内容でした。老眼、現役の時より読めてないけど努力中、こうしたら読めた。こんな本を読んでいる等々。ただし、藤田香織の「高い目薬は良い」は新説でした。やってみます。
三角窓口の中武照美さんみたいな「飽きてしまった。本を読むことに…」的なコメントがあったら一番嫌だなと恐れていましたが、さすがに編集部から声がかかる人たちなので活字への興味は失わないようです。結局は中武さんも、村山早紀『ルリユール』で気持ちを取り戻すので、私自身もそこは大丈夫と思いたい。
田口久美子が、書店を辞めていたのはちょっと驚きました。しかし、新しい書店ビジネスモデル「本をつなぐ」を提案するあたり、引退感はありませんね。

企画書「本をつなぐ」
https://www.webdoku.jp/honshi/taguchi.html

町の本屋はスペースが限られるので、今並んでいるのを減らしてでも中古本で埋めるとなると、本当にコンセプトが重要になります。

ところで、常連の書き手の名前がずらりと並んでいる図には色々思うところはあります。このまま書き手も読者も老いて老齢雑誌になるのだろうか、とか。合わせた訳ではないでしょうが大槻ケンヂも冒頭「僕は現在55歳。「本の雑誌」読者平均年齢に近いかも。」と。続くページで高野秀行が「1966年生まれ」と書いているので同い年のようです。対談したら盛り上がりそうです。

新刊では翻訳SFの内田ダービーと紹介された1冊、『帝国という名の記憶』がtwitterでの評判もよく好み。藤ふくろうの翻訳文学も古屋美登里ダービーで、訳者のための書き下ろしというのが凄いです、エドワード・ケアリー『飢渇の人』。冬木糸一のノンフィクションでは第二次世界大戦で米軍の暗号解読にあたった女性たちを描く『コード・ガールズ』が良さそう。

穂村弘は萩尾望都『一度きりの大泉の話』。話題の本ですが、萩尾望都の読者じゃないので今はパス。勝手に、同時代作家の誰かとの確執だか嫉妬だかからひどいことをした話と想像しています。

トーベ・ヤンソンとべつやくれいは女性だったのか。なんとなくそうかなぁと思ってたけど確信的なことが書いてあるのは初めて見た。だから何? という気もするが、これからの時代、こういう体験が多そうです。

そういえば『リヴィエラを撃て』で勝手に男性作家と思い込んでいたのが高村薫で、その10冊を佐久間文子が選んでいます。ほとんどのタイトルを私でも知っているあたりさすがベストセラー作家。で知らなかったのが、脱ミステリーの純文学作品『晴子情歌』。周囲は作家にジャンルを押し付けないほうがいいと改めて思います。

逆に『スキップ』で女性作家と思っていたの北村薫で、今月は佐々木徹雄『三分間の詐欺師』内の野口久光に映画を途中から観て怒られたエピソードを紹介。私も映画は最初から最後まで止めない派なので気持ちはわかる、そういう時代じゃないですけど。未だにネットで映画を見たことがないし。以前、小林信彦がビデオを飛ばしながら観る場合もある的な言い方をしていて、意外というか、残念というか、複雑な気持ちを抱きました。効率では仕方ないかもしれないし、実際、駄作を2時間観るくらいなら早めに切り上げて別の可能性を広げるべきと思うのですが、どこか引っかかります。

田中香織が紹介するのは相原瑛人『ニューノーマル』。Twitterで見たときは、よくあるネタをうまく漫画にしたものと思っていたのに、あれを長くできるなんてどんな力量なんだ。… と、今検索したのだけどこんな話だったっけ?あ、オリジナルでなく、すでに第1話を見てたんだな。

小山力也の紹介する古書店は下神明「星野書店」。行ってみたいけど「奥さまが素早く番台に現す」のはちょっとな。
図書カード三万円使い放題は今村翔吾。文章からめちゃくちゃいい人感が伝わります。歴史小説作家はみな人柄が素晴らしいときくけど、こういうことかも。

「古本屋台」は常連と店で飲んでます!! 物凄い展開なのにあまりに自然すぎ。停電して慌てるのもランタンがでるのもなぁ。スマホのライトじゃ合わないよな。久住昌之のバンド名「スクリーントーンズ」もいい。

鏡明はマーク・フィッシャー『資本主義のリアリズム』。「すべてを金銭的な価値に置き換え」、「進歩や変化」を否定し、「これしかない論法」で現実解を押し付ける。

青山南は『風と共に去りぬ』の新訳版。新潮文庫の鴻巣友季子版は出版当時インタビューもあって意識してましたが、荒このみの岩波文庫版があるなんて初めて知りました。しかし、三角窓口の石原真さんと似ていて、私も訳注は最低限にすべきと思う派で、丸々1冊分の解説って、それは最初から『風と共に去りぬ アメリカン・サーガの光と影』でやるべきじゃなかったかな、と思います。

藤岡みなみはメインは『世界SF作家会議』。なんだけど、2031年のホームパーティ描写がとても上手い。ほんと10年後どうなっているやら。
同じくコロナ明けに悩む宮田珠己は、仕事に戻れるのかいな、ともっと切実。しかし散歩を半年も続けしっかりペースと体力を戻しているので、やるときはやる人のようです。

風野春樹は『チャイニーズ・タイプライター』。「西洋文化の発明品であるタイプライターを中国語に対応させるという不可能な試みの歴史」。「不可能」ですよねぇ、やっぱり。第一水準でかろうじて何とかなる和文タイプの比じゃないわ。

堀井憲一郎によれば、漫画の全巻揃いにはレンタル落ちもあるとか。『スラムダンク』や萩尾望都や大島弓子が欲しいのだけど怖くて買えません。

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