本の雑誌 2020年7月号 – 速水健朗はバブルを正確に描くが意外と若かった。

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本の雑誌 2020年7月号 (No.445) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特殊翻訳家 柳下毅一郎の書斎は、資料を最適化したらこうなった感があっていいな。背表紙の揃っていない棚でも、しっとり収まっていてきれいです。

特集は「献辞の研究!」
力作揃いなんでしょうが献辞の相手や意味を追うのに精一杯で、私の好奇心は広がりませんでした。テーマが狭かった気もします。

新刊は何故かまだ1冊も購入していないマーク・グリーニー『レッド・メタル作戦発動』が文春文庫な響きでよい(ハヤカワ文庫NVです)。SFとファンタジーとボーイ・ミーツ・ガールの幸せな融合『空のあらゆる鳥を』。話題の『三体Ⅱ 黒暗森林』は読書中。

服部文祥は空腹スイッチを経て、皮をしゃぶりながら一家を救う旅に出る『北のはてのイービク』最後の一文でのけぞりました。今回も素晴らしい!

速水健朗は親指シフトとソアラと浅見光彦。内田康夫『軽井沢殺人事件』を題材に、いつもどおり鮮やかにミステリと時代の両方を切り取ります。連載タイトルは「モーター文学のすすめ」だけど裏テーマは上り調子の日本。高度経済成長時代とかバブルとか。自動車は消費社会が元気な時代と合っているのでしょう。なお Wikipedia によると速水は 1973年生まれ。若くて驚きました。あのバブルの空気感をよくぞここまで正確に伝えられるなぁ…。

宮田珠己は「ロトなんてどうでもよくなった」と本音が炸裂しています。ほんと間抜けな思考をダラダラ続けられなくなりましたね。彼のバズったツイートはこちら

円城塔の紹介する『黄金州の殺人鬼』は未解決の殺人事件を私的に調査していた著者のブログの書籍化。著者の死の2年後に犯人が捕まるのだけど犯人当ては正解だったのかは本を読まないとわからない。
風野春樹はイギリスの医療制度NHSを紹介してから産婦人科ジュニアドクターの日記『すこし痛みますよ』と、日英変わらない医療現場の制度の限界。
江部拓哉は鰻屋の話のラスト。予想外にいい話でした。

読み物作家ガイドは森絵都。未読ですが「本の雑誌」ではたびたび取り上げられているので馴染み深い作家さんです。調べたら誕生日が1日違い!! ますます親近感を持ちました。まずは『DIVE!!』かな。

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