WEB+DB PRESS Vol.94 2016年8月発売 / 技術評論社 / 1480円+税
表紙デザイン: 柴田昌房(30A) 表紙イラスト: Gurihiru
技術評論社のプログラミング系雑誌「WEB+DB PRESS」と「Software Design」はどちらも本当にいい記事が多く、毎号毎号とても良い勉強になっていますが、今号は特に素晴らしく最初から最後まで読み応えのある記事ばかり。素晴らしいです。
遠藤雅伸の「ゲームをおもしろくするコツ」連載2回目は「文字情報の伝え方」。当たり前のようですが非常に難しいだろうことは軽く予想できます。そんななかで「Dead Space」の実装とか凄いなの一語。実際には敵に弱点を示すようなものであり得ないだろうけど…。
特集は「スケーラブル AWS」。これも良記事。
私のような薄ぼんやりとしか知らないレベルでも、最低限の言葉は説明しつつスケーラブルの意味を EC2、RDS、ElastiCache、それぞれで細かく分析する姿勢は、非常に分かりやすい。ちょっと前まで、あるいは今でも(?)、何千万円、何億円レベルでオンプレミスに組んでいたシステムがカンタンに入手できると考えると凄いことです。ELB のクラスタリングを自分で考えなくていいだけでもラクですよね。ただトラブったときどうするのか AWS に電話し続けるのかと考えると、悩みは同じかもしれません。
特集2は「はじめての Kotlin」。どこまで Kotlin で行けるのか分からないと明記した上での紹介がいいです。きっと筆者が真面目、かつ、将来が見えているのでしょう。ここらへんは6章でもきちんと紹介されています。個人的には Android SDK に近い周辺で取り込まれていくんだろうなと思います、徐々に分かりやすい形に変更が加えられる形で。しかし、紹介される Android SDK の構文、あまり悪いと思えないんですよね…。それはJ2EE時代の面倒な設定やインターフェースに親しんでせいかもしれません。
そこで「Java の新定石」。Struts と Seasar2 亡き今、残ったのが Spring と、J2EE から面倒くさいのと XML を取り払った Java EE。一周回って戻ってきた感じ。分かりやすいです。やっぱりあれは無かったよなぁ… XML Schema とか EJB とか UDDI とか一生懸命覚えたけど。単純な HTTP 経由の RPC だったのを汎化して駄目にした SOAP のあとに REST が出たとき「Simple is Best」と思ったもんね。
温故知新的に凄いのが特集3の「Electron」。いやもうまるで .NET Framework とか Borland Turbo C++ Builder みたいな慣れ親しんだ感じ。Visual Basic V6 でもいいです。これは古いプログラマ好きそうだ。JavaScript 固有の好きくない感じはありますが、それさ乗り越えればデスクトップアプリ復権かも。
「PHP 大規模開発入門」は初心者がはまりそうなポイント、例えば動的な型のキャスト等を丁寧に解説。偶然ですが「Perl Hackers Hub」も Perl への動的な型の導入。スクリプト言語の良し悪しの微妙な部分です。
「フロントエンド先遣隊」は WebRTC と ORTC との関係を2016年9月の最新情報で説明。素晴らしい。「大規模インフラ運用最前線」はデータベースのバックアップとリストア。これも AWS での感想と同じで今やオンラインバックアップが常識っていうんだから、運用もプログラミング同様、技術レベルは確実に上がってます。
「Ruby の現場の最新技術」はスレッドベースのWebサーバー Puma の解説。スレッドセーフのバグを解消するより、メモリを積む方が安くつくので、プロセスベースの unicorn の方が優位と思うがどうか。これも時代が変えていくのか。
「Emerging Web Technology 研究室」はデータの可視化。Embulk で ELT し、Re:dash でグラフ化 とこれまたちょっと前までの大規模な BI ソリューションをオープンソース化。凄いねぇ、ホント。