WEB+DB PRESS Vol.93 2016年6月発売 / 技術評論社 / 1480円+税
表紙デザイン: 柴田昌房(30A) 表紙イラスト: Gurihiru
新連載「ゲームをおもしろくするコツ」は確率の話。「確率的手法」は有名な話ですが、これを有名にしたのはもしかしたら(あるいは恐らく)著者の遠藤雅伸かもしれない。
まつもとゆきひろは新しい言語「Streem」を作っているとか。いい話だなぁ。その自由さといえばよいか、肌触りというか。
特集1は「実践 見積り」。期待したのに今ひとつ。
まず「見積り」の対象が途中で変わります。第1章から第3章の見積りは「コスト」の見積りに重きを置き、そのための工数見積りを行いますが、紹介するのは古典的なファンクションポイントによる見積り。安定した定番と言えるのかもしれませんが古臭さは感じます。。で、アジャイルな環境のおける「コスト」の見積りとして続く第4章に期待すると、これがスクラムを詳解する「スケジュール」の見積り。しかも「見積り」でさえなくスクラムの方法論。これはちょっとない。
またリアリティを重んじる「WEB+DB Press」とは異なる違和感を特集全体から感じました。いつもの現実の事象より、教科書的な理論が中心。その良し悪しはともかく契約に絡んで価格を下げなかった経験は私にはありませんし、営業担当の主張する「勝てる価格」に合わせて機能を落としたり、フェーズ分けするのは常套手段と思いますがさほど延べられません。過大見積りの弊害に「契約が取れない」が出てこないのも不思議です。正確に見積りました、でも負けました、じゃぁ、何のための見積りよと思います。
特集2は「SQLをチューニングしよう」。MySQL のチューニングを丁寧に実例とともに解説します。第4章は「チューニングを越えて」ということで更に一歩踏み込むようだ、素晴らしい … と期待しましたがこれは中途半端でした。
図3、図4の山縣有朋のIDは9の間違いでしょうね。あとカーディナリティが低いときのインデックスでビットマップインデックスは触れても良いのでは? P62 は50MB では?
特集3は「モダンCSS」。
オリジナルの CSS の設計の悪さに四苦八苦している様子がよく分かる記事でした。そんな中でのパターンや設計思想やベストプラクティス、Post CSS とその関連技術の紹介。
ところで「ITちゃんの部屋」は、less でカスタマイズした bootstrap で実装していますが、デザインを変えようかなと思った時には SaaS でカスタマイズするのが主流になっていました。で、しばらく放置状態が続いています。そろそろ何とかしようかなと思っていたら次は Post CSS らしいです。ほんとこのジャンルは落ち着きませんね。
Perl6 は「仕様」でしかなく、その実装がいくつか存在する構図らしく、その1つが「MoarVM + NQP + Rakudo」らしい。それでいいのかなぁ…。JavaScript みたいなもんか、違うか?
その JavaScript のモダンな環境を一気にまとめ上げたのが「Emerging Web Technology 技術室」。これは素晴らしい!! めまぐるしく変化する JavaScript 周辺を多少の独断と偏見はあってもこうして概観する記事が読みたかった!! 特に最後の、避けるべき技術への言及が素晴らしい。記事内で触れてないものが、単にマイナーだからなのか、ダメな技術だからなのか、単に筆者が知らないだけなのか判断できませんからね。
関連して「進め! フロントエンド先遣隊」は ECMAScript 2016/2017 の予想。まだまだこれからも変化があるのね…。
「Java の新定石」はマルチスレッドと GC。Thread クラスから時代をおって説明し、最後にスレッドって要る? という所まで。分かりやすい流れです。GC も同じ。
PHP でコマンドラインプログラムも、デーモンを紹介しながら、避けるべき、避けられるはず、と現場感のある提言。いいですね。
「大規模インフラ運用最前線」はデータベースのスケーリング。スケールアウト、スケールアップ双方とも丁寧に解説され、メルカリでの実例も詳解されます。