ランゴリアーズ – ただの SF として面白い

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ランゴリアーズ / スティーヴン・キング / 小尾芙佐訳 / 文藝春秋 / 2800円
装画 : 藤田新策 / デザイン : 坂田政則
Four Past Midnight 1 by Stephen King 1990

中編集「Four Past Midnight」2分冊の1冊目 (2冊目は『図書館警察』。本文とは関係ありませんが藤田新策&坂田政則のカバー、扉絵は最高です。

「ランゴリアーズ」

飛行中のジェット機から乗客の大部分が突然消えてしまう。

どう転ぶか分からないキング中編集の冒頭が、いきなりストレートな SF で驚きました。少し前の『トミー・ノッカーズ』が後半、狙い通りのチープな展開でしたから、キングはきっとこの手が好きなのでしょうね。

意外にも襲ってくる闇や、空港の正体不明な感じがよく描けていますし、乗客全員を気絶させるネタも含め、後半からエンディングは一気に盛り上がります。読後の気分も良いですね。

 

「秘密の窓、秘密の庭」

ある日作家のところに、見知らぬ男が現れ、お前は俺の作品を盗んだ! と原稿の束を寄越す。

ネタ的には少し前に発表された『ダーク・ハーフ』と同じような作品。ポイントはジョン・シューターの存在と思いますが、このオチで前半部はどう説明するのでしょうか? 読み返すと実は慎重に組み立てられていて色々気づくのでしょうか?

細かな技巧はともかく、全体の印象としては残念ながら作者のまえがきにある、小窓から覗く風景の、強いイメージ以上に話は広がりませんでした。

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