本屋大賞2015 / 本の雑誌社 / 556円+税
表紙デザイン 寄藤文平
大賞は上橋菜穂子『鹿の王』。
大賞の名にふさわしい堂々の物語で書店員のコメントも納得のものばかりです。鉄板でしたね。好きな影山徹の表紙が今回はピンとこなくて安直な動物モノを想像していたのは秘密です。
初期の本屋大賞はどこか女性読者向けの繊細な物語が多かったのが、2010年『天地明察』くらいから、アカデミー賞作品賞みたく大きな話が好まれるように変化してきている、ように思えます。第1回で2位だった横山秀夫『クライマーズ・ハイ』は今なら大賞でしょうね。逆に昔だったら1位かもと思うのが、今回2位の西加奈子『サラバ!』。「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」いい言葉です。
2011年『謎解きはディナーのあとで』は人気投票のおかげで1位だった、と思っていますが、その年なら1位かもが、3位の辻村深月『ハケンアニメ』。愛に満ちたお仕事小説。Google IME だとキチンと「覇権アニメ」に変換してくれます。さすがだ。
ベスト10の他の作品では、5位の月村了衛『土漠の花』の冒険小説要素と、伊坂幸太郎の小説技巧さ、8位阿部和重との共著『キャプテンサンダーボルト』、9位『アイネクライネナハトムジーク』が気になりました。
11位から30位で目についたのがイヤミス要素。18位 葉真中顕『絶叫』、20位 長江俊和『出版禁止』、26位 誉田哲也『ケモノの城』、27位 黒川博行『後妻業』。これで本屋大賞は厳しいでしょう…って、湊かなえ『告白』があったか(2009年)。そしてすべての伏線を回収する短編集や、「ほっこり」した気持ちにさせてくれる作品は上位、下位を問わず多いですね。連城三紀彦も目についたな。
面白そうでまったく聞いたことがなかったのは小川洋子の小説の人物からの依頼にクラフト・エヴィング商會が応える『注文の多い注文書』(10.5点)、芥川の作品を元に現代医療を風刺する『芥川症』(6点)。「本の雑誌」でお勧めだった『トワイライト・シャッフル』(3点) はもう少し集まっても良かったと思います。