本の雑誌 2015年7月号 – これからの「本屋」…。

本の雑誌 2015年7月号 (No.385) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

「本棚が見たい!」の最大の功績は、これまで茶色一色だった蔵書家の棚に天然色を持ち込んだこと。ラノベや文庫や雑誌などの、安くて、小汚い背が整然と並ぶ細谷正充の棚を断固支持します。

 

特集は「これからの「本屋」の話をしよう!」。

予想はしていましたが全編ひたすら暗いです。期待の星(?)のニューウェーブ座談会だって本屋だけでは食えない話し。粗利益率22.2% – 人件費11.7% – 管理費 10.0% = 利益 0.5%。文具なら粗利益率 30%~40%、カフェなら65%~70%。そこに amazon やセブンイレブンが来るんだから、そりゃ街の本屋さんは消えるよね。

石橋毅史は海文堂が消えたことを軽い気持で尋ね回って、最後に喫茶店で説教を喰らうのですが、2人の言葉も思いもどちらも弱いですよね、仕事がないと笑う社長の前では。どんなにありがたがられようと売れなければ意味はありません。「この半分でも普段来てくれれば」という最後の営業日の言葉が重くのしかかります。

 

本屋という空間そのものが私も大好きですが、商売として成り立たない現在の状況は残念としか言えません。啓文社のリアル書店ならではの客引きの努力も、カフェ併設の話しも、それぞれに工夫があり、また実現する努力も素晴らしいのですが、根本的な原因が利益率の低さにあり、それをどう補うかという話しですから、しなくていい苦労をしているとしか思えません。大井潤太郎が一貫して言うように、出版社や取次がまず変わり、全体で生きることを考えてからではないでしょうか。

 

新刊紹介では堀部篤史のおすすめがどれもよさそう。『オフ・ザ・マップ』『食べる世界地図』『東京美女散歩』。話題の『紙の動物園』は地元の小さな書店の店頭でも第4刷が3面積み。人気は、コアなSFファンから徐々に広がりつつあるようです。江國香織が訳者なの? という驚きよりも、まず、倉本さおりが紹介なの?と驚いたトレヴェニアンの半自伝的小説『パールストリートのクレイジー女たち』。トレヴェニアンって、ニューヨーカーだったの?とこちらも驚きました。

 

個人的に嬉しいのが吉田豪初登場。内容は「万歩書店」はつまんなくなったという論旨。これで表紙にまでよく掲載したなぁ > 編集部エライ。

内澤旬子は次から次へと阻まれる上京の様子を驚くようなスピード感で描きます。「殺し食い」もいいけど、意外や物語りも上手なんじゃないかな。次回はブルックスブラザーズ店内での服選びが1時間以下というタイムリミット物。期待だわ。

荻野アンナは、フランス語で落語をやるに際して「寿限無寿限無」を「ジュテム、ジュテム」で置き換えたとか。北村薫同様、感心。

 平松洋子は日本橋のそば屋。もうとにかく美味しそうとしか言いようがない。すごい連載です。ページから鰹節が香ります。

 

「電車で本を読んでいる人が増えているように感じるのは気のせいかな。」と浜本編集発行人。私そう思います。スマホはもちろん多いし、電子ブックリーダーや iPad もそこそこ増えてきていますが本も、復活しているような。

なんだかんだで嬉しい。

ちなみに私は上京以来、総武線快速、中央線、小田急線、田園都市線、東横線、半蔵門線とさまざまな路線の通勤途上で「本の雑誌」を読んでいますが、ただの一人も別の読者を見かけたことはありません。もちろん(?) 話しかけられたこともありません。客観的に見たらアヤシー人なのでしょうね、このタイトルと表紙…。

 

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