本の雑誌 2015年5月号 – 倉本さおりの「きゅっと」がベスト

本の雑誌 2015年5月号 (No.383) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

冒頭ときわ書房の宇田川拓也が登場。意外にも優しそうな人。もっと神経質な感じの人を期待(?)していました。本棚はいい意味で昔ながらの本屋さん。「サブカル」の棚とかいいなぁ。祖父江慎も初めてお顔を拝見。が、顔よりも後ろの「岡崎京子」が気になる気になる。

続いて小谷野敦の「芥川賞卒業宣言」。中途半端な割り切りの言葉が並ぶのかと思いきや、お前らみたいなワカランチンに審査してもらわなくていいよ、と名指しで批判に応える挑戦的なもの。へぇ。そこまで言うなら読んでみるかと思いました。

 

特集は「対談は楽しい!」
吉行淳之介が対談の名手だというがよく分かりました。そのバックにいたのが長部日出雄でいいインタビューになっています。聞き手は阿川佐和子のバックにいて、本誌にも連載のあった柴口育子。好きな書評家さんくらいだったので、知ってびっくりしましたよ。

対談やまとめといえば、個人的には吉田豪。沢野ひとしが、阿川佐和子が対談の名手なのはまず小柄でかわいい感じで、自然な感じで品があるから、と褒めた上で「男だと吉田豪かな?」と。ツボちゃんは「カネヤンの飛球くいこみインタビュー」の吉田豪によるセレクトを熱望。段違いの信頼度です。中場利一の「Number」での清原との裏話もいいですね。

新刊めったくたガイドでは断片的な東京のイメージを集積する恩田陸『EPITAPH東京』や、『ハーレムの闘う本屋』、『僕とおじさんの朝ごはん』(吉田伸子も取り上げているが、トーストと目玉焼きはないよな…)もいいけど、倉本さおりの『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』に対する評の「読むだけで臓器がきゅっと縮んで痛みを伴うような」という表現が一番来ました。

今尾恵介「部落差別と地図」によると復刻される『江戸切絵図』で差別地域の地名は削られているとか。根深いとしか言いようがない。

日下潤一はピケティ本を日仏英で装丁比べ。こういう人がさらりと「翻訳がよく、原文もいいのだろう。読みやすくて、わかりやすい。」と書くとぐっと読みたくなりますね。

突然何が始まったのかと思ったのが、子どもと鹿射ちの話しの服部文祥。
木嶋佳苗『礼賛』の評のために柳下毅一郎が復活(編集者エライ!)。うつろな虚無さがよく描けていますが、私は彼女にさほど恐怖は感じません。こういう人、多いんじゃないかなぁ…。
内澤旬子の「着せ替えの手帖」は本屋大賞発表の場のための浜本発行人のスーツ選び。時事ネタまで織り込んでバッチシ期待をもたせます。その本屋大賞は上橋菜穂子。順当ですね。来月送られてくる年間購読手続きで一緒に購入します。楽しみ。
北村薫は新連載。短いページで自分の読書歴を振り返りながら発見の面白みをうまく表現しながら、次号につなぐ。作家はさすがですわ。
『Distant Reading』。個別の本には寄り添わず、距離をとって観察する。時代時代における書物のタイトルの長さを測定して …、で、本当にずっこけたけど、うーん。とんでもと切って捨てられない何かはあるかもと思わせるのが円城塔。風野春樹の『失われた夜の歴史』も面白そう。

青木大輔の YMO 紹介は私ですか !? という感じ。
1. 田舎にいて憧れる。就職で上京すると年下の友人が「中野、行きましたよ、人民服来て」とか普通に言われて悔しい思いをする。
2. 93年「再生」にがっかり。だらーっとした楽曲がえんえん続きフラストレーションの極み。ライブが終了し、3人がステージの前に移動する直前に「ライディーン」の最初の3音だけ弾いて観客総立ちになるんだけど、昔のYMOはそれだけ。
3. 「ワールドハピネス2011」で大喜び。もうみんな60だからね。やりゃいいんだろ? とは言わないだろうけど楽しそうに昔の曲を延々とメドレー。泣きました。
ナイアガラーな私としても、細野さんにもうひと押しして欲しかったです。

内田俊明は貫井徳郎の10冊。何となく暗い印象しかなかったので、ずばりと言い当てられたかのような『追憶のかけら』の紹介が『慟哭』以上に気になりました。

 

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