本の雑誌 2014年11月号 (No.377) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「リトル・マガジンの秋!」。内堀弘の紹介する戦前のリトル・マガジンの書影もタイトルもかっこ良すぎ。これらだけ並べたという開店当初の新宿紀伊國屋書店は、きっと現代に蘇っても通用しますよね。
またばるぼらの紹介する20世紀のミニコミは猥雑な文化の興りが感じられ妙にワクワクします。アンテナの感度が悪く『モンスーン』とか知りませんでしたが、当時触れられていればなぁ、きっと渋谷の中古レコード屋とか並んでいたのでしょうが。残念。
逆に現代のものについては「雑誌界で元気がいい」と言われるほどに元気さも感じず、ときめきも感じないのは「かつてのミニコミは趣味系の雑誌が主流だったと思うんですが、いまのリトル・マガジンはライフスタイル系が多いんですよね。」という編集部の質問に対して、
ライフスタイル・マガジンといっても理想の生活を提案するわけじゃなくて、いろんなスタイルを紹介することで、現代を楽しく生きるための術・発想・考え方を模索していこうというスタンスですね。
と、ミニコミには趣味、サブカルを求める姿勢の想定外だからか。以前、萩原魚雷さんが「仕事文脈」を紹介したとき、そんな雑誌もあるのかと驚きましたが主流だったのですね…。
内澤旬子はいつもと趣向が異なり自分のファッション史前編。学生時代から29歳まで。1967年の早生まれなので大学入学は1985年、就職は1989年、29歳は1996年。最近ようやっと『イニシエーション・ラブ』を読んだのですがまさにこの時代。解説では1964年生まれの大矢博子が活き活きと80年代カルチャーを語っています。お洒落さんには良い時代です。その大矢博子が推す東野圭吾の10冊。私は『白夜行』が合わず以後、手を出していない作家なのですが、こんなに芸風が広かったのですね。ふむ。『秘密』あたりから再開してみましょうか…。
穂村弘は読みたいと思って買った本、読まなきゃと思う古典、ふとしたきっかけで読まないまま今に至るマンガ、そんな状況でもつい再読してしまう本、と誰もが思い当たるテーマ(?)で笑わせてくれます。この人、本当にコンビニマンガ好きだよなぁ。新しいカバーのディック本をブックオフで揃えるのが目標という水鏡子。あの黒塗りでシンプルなデザインのカバー、私は好きになれません …。浅生ハルミンが学生時代によく世話になった、ぴぽちゃん家の朝ごはんというのが、たまらなくゆるくて充足感のある風景。厚切り食パン2枚とか、インスタントコーヒーとか、一々ディテールがかわいい。
風野春樹はどこでこんなの見つけてくるんだ「18世紀非モテ男のアイタタ光源氏計画」ことウェンディ・ムーア『理想の花嫁と結婚する方法』。あまりにもてないから脳内彼女をリアルに育成するという信じられない話。結果も知りたいが、主人公のヘタレ度が凄そうでそちらも興味だ。
新刊紹介では青山文平『鬼はもとより』を紹介する北上次郎の嬉しさが際立ちます。間室道子はケリー・リンク「モンスター」を柴田元幸訳、古屋美登里訳で読み比べ。モンスターを近所のちんぴら兄ちゃんに例えた比喩が分かりすぎます! ちなみに紀伊國屋新宿店では早速のモンスターフェア。素晴らしい。
いつもの冴えがないのが関口苑生。前半の『後妻業』は気持ち悪さも含めよく評していると思いますが、後半の連続殺人モノの紹介の連続は低調。風邪でも引いているのか? と思ったら本当に病院通いとか。うーん、休んでくれい。文章に出ていますよ。
新刊は他に『プロット・アゲンスト・アメリカ』『火星の人』『全滅領域』