本の雑誌 2014年5月号 (No.371) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「東京創元社に行こう!」。この「に行こう!」特集、好きなんですよね、濃縮度が他の特集と違い過ぎます。今回もその期待に違わず、編集部訪問に始まり(汚い机は見るだけで楽しいですが、これが仕事場と思うと羨ましいが先に立ちます)、戸川安宣、北村薫、新保博久、北原尚彦、帆掛さんに読者や早川書房編集部といつもの面々が思い思いに語ります。
今回の個人的な一番は、出ない本キム・スタンリー・ロビンスンの『ブルー・マーズ』。最終巻が出ないため残りの2冊も読み始められません。早く出してね♪ (あわせて『アメリカの夢の機械』が紹介されているのがおかしい)。
内澤旬子はお洒落紳士と食事。「男の人って心の底から褒めると、嬉しそうにするものなのだなあ、そして嬉しそうにされるとこちらもちょっと嬉しいものなのだなあ」。いいですね。個人的には置き去りにされてちょっと無口な別の紳士の気分ですが…。
萩原魚雷は松久淳『中級作家入門』。知らない名前でしたが、作ったものは超有名で、まさに中級作家。例に挙がった、1年間かけて書いた本が定価1500円で5000部売れて1割印税を計算すると、えーと、年収75万円…!? 一瞬、計算ミスか、と思ってしまいました。みんながみんな100万部(これなら1億5000万円)じゃないですからね、厳しいです。
浅生ハルミンの『へたっぴんの美学』紹介を読んでいて、えええっ!!と個人的に大激震。この場所って、小学生の頃遠足で行っていた「八十八ヶ所」やん。なぜ、そんな名前で呼んでいたのか知らないけど、得体の知れない洞窟やら(ゲジゲジがいっぱい)、怪しい石仏やら、こ汚い境内やら、カオス以前の山の上の不思議な場所。それが今じゃ観光遺産なの!? いつの間にかマンゴーや地鶏の炭火焼きが名物になっていたの以上の驚きでした。
穂村弘はマンガの一気読みの話。今や『スラムダンク』全31巻を25巻から読んでも、全員のエピソードが走馬灯のように蘇り全巻通読と同じ効果とか。恐るべし。水鏡子は昭和30年台の山田風太郎以外の選択肢もあった忍法ブーム時代。津田淳子は半世紀前の紙レザック66をビジネス書『嫌われる勇気』の表紙に使った吉岡秀典の勇気を紹介。
トヨザキ社長の連載が終了。やっぱりツボちゃんの指摘のせいかなぁ。強力な連載陣(今号も強かった)の一人だっただけに残念です。また是非。その最後の作品はポール・オースター『写字室の旅』。作者と登場人物の倒錯的な関係と読みますが、ここは青山南の認知症としての読み方のほうが面白い。もちろん「正解」かどうか、とは関係なく。
他に、北上次郎が紹介する白河三兎『神様は勝たせない』、今月の一冊の中川右介『角川映画』など。