本の雑誌 2011年5月号 (No.335) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
今月の注目は坪ちゃんの名編集長養成虎の穴。目黒さんの椎名さんへの思いが素直に語られます。分量は少なく既刊本と重なる部分も多いのですが、古いファンであれば感じる部分があるのでは? 是非。
特集は「春のタイトル祭り!」。毎月タイトルをひねり出している編集者の苦労や裏話しが面白かったです。新書のタイトルなんて本当に上手いものが多いですね。それに比べて一頃の新潮文庫の海外ミステリーはあまりにストレート(=ネタばらし)でひどかったですが、最近はどうでしょう。あと良かったのが読者アンケート。感心するタイトルが並びました。
『リプレイ』『時のかなたの恋人』好きとしては『13時間前の未来』は期待。『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』もサブカル好きとして期待。北上次郎推薦の山田太一『空也上人』はまるで趣味ではないのですが気になりました。ドラマ化するなら若い頃の中井貴一か。
渡邊十絲子は一人で素晴らしい新書を推し続け、「何となく実用書ばかり」と思っていた私の新書感を180度変えてくれました。今回の『日本語と時間』『漢語の知識』の紹介も素晴らしいです。頑張れ、フリーランサー。小説嫌いなはずの木村弁護士ですが、最近の読みっぷりはどうでしょう。今回の遠藤周作『女の一生』も脇役への注目や最後の言葉の引用など堂々たる紹介です。
五木寛之は『青春の門』と『かもめのジョナサン』しか知らず何となく泥臭い人と思っていましたが黒田信一の選ぶ10冊で見方が変わりました。同じく「ベストセラー温故知新」の『恍惚の人』も、そんなにエポックメイキングな本だとは知りませんでした。結局、認知症は、この本で1972年に定義され、以来変化していないというのですから凄い話です。