日の名残り

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日の名残り / カズオ・イシグロ / 土屋政雄訳 / ハヤカワepi文庫 / 720円+税
カバー装画: 渡邊伸鋼, カバーデザイン: ハヤカワ・デザイン
The Remains of the Day by Kazuo Ishiguro 1989

休暇中の執事スティーヴンスンは、同じ屋敷で働いていたミス・ケントンの嫁ぎ先である西部地方へと再開の旅に出る。途中、屋敷の元の主人ダーリントン卿の思い出、厳格な執事であった父との関係、大戦前夜の外交会議における卿達の振る舞いとその後の卿の紳士としての行動、そしてミス・ケントンとの関係が語られる。

古いしがらみと屋敷と主人に縛られ、自己欺瞞の固まりであるスティーヴンスンと、それに並行して描かれる主人ダーリントン卿の、紳士たる所以に利用され、騙された過去。その背景にある大英帝国の姿。タイトルの暗示する、これまで栄華を誇ったものの末路。すべてが物悲しい結末で、自動車旅行の初期にあった極めて英国的な素晴らしい風景は、遥か過去のものでしかありません。もっとも最後にわずかに点る桟橋の明かりには作者の希望が込められていますが…。

読み終えた直後はあまりのステレオタイプな構成とスティーヴンの嫌らしさに、さして感心しませんでしたが、暫く時間が経ち、改めてページを繰り返してみると、じわっときて、ありゃいい作品だわ、と思い直しています。

atachibana

立花明 - 東京都在住、IT系企業勤務。 WordPress Document Team メンバー。 連絡先はこちら

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