ドクター・ブラッドマネー / フィリップ・K・ディック / 佐藤龍雄訳 / 創元SF文庫 / 1008円(960円)
Cover Illustration 浅田 隆 / Cover Layout WONDER WORKZ.
Dr. Bloodmoney / Philip K. Dick
2度の「非常事態」で文明退化した世界の、極小コミュニティ内のお話しが、頻繁に語り手と時間を変えながら小さく小さく語られます。タッチは「パーキー・パットの日々」に似ているかな。
途中、大した事件も起きないのですが、小ネタが面白いので一気に読めます。たとえば「非常事態」により一人永遠のディスクジョッキーを強制された宇宙空間のデンジャーフィールド、最初の非常事態の張本人と批判される中ですっかり電波系していくブルートゲルト、サリドマイド児で超能力者ホッピーを脅かす、少女エディーの腹腔に巣食った同じく超能力者の兄ビル、そしてビルの「ヒドゥン」、などなど。
一体こんな話し、どうやって着地するのかと思ったら超能力者通しの戦いと、精神科医による遠隔診療の末、病んだ世界から一歩前へ進んで小さく終わり。意外と楽しめました。