血ぬられた神話

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脅威の世界史 古代地中海 血ぬられた神話 / 森本哲郎編 / 文春文庫

扇情的なタイトルとは異なり、内容は実にまっとうな古代西洋史を巡る歴史対談。ポンペイを絡めたローマ文明、クレタ島のミノア文明、ホメロス&シュリーマンを絡めてミケーネ文明とトロヤ。

神話と事実が一緒に語られる大らかさがいいですね。「イリアス」「オデュッセイア」を読んだときも同じ感想を持ちましたが、「アルゴ探検隊の大冒険」での大好きなシーン、雲の上から見ている神様が介入してきて、それに人間が翻弄されるくだりを思い出ししました。

ゼウスが何故、何人もの女性と関係を結ぶのか、の説もおもしろい(P.204)。曰く、各部族それぞれが最高神をもち、みな神の子孫を名乗っていたところを、神々の統合が行われ、ゼウス一人が最高神になったため、ゼウスは嫌でも方々の女性と浮気をしなければならない。ふむ。もっとも男の貞操は大目に見られていたようですが。

造本的な工夫が多々。クロスリファレンス、脚注、図版、地図等の充実で素人にも分かりやすい。素晴らしい労作です。ただし原書の「NHK文化シリーズ歴史と文明 埋もれた古代都市4 西欧文明の起源」を「血ぬられた神話 」にするのはどうか。売らんかなでしょうが逆に損をしています。

シュリーマン「古代への情熱」
アイスキュロス「アガメムノン」

 

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