宇宙の果てのレストラン / ダグラス・アダムス / 安原和見訳 / 河出文庫 / 682円 (650円)
カバーデザイン:永松大剛(BUFFALO.GYM) / カバー装画:氷見こずえ / カバーフォーマット:佐々木暁
The Restaurant at the end of universe / Douglas Adams
この宇宙を支配している男に会うため壮大な計画のヒトコマとなるビーブルブロックス。ヴォゴン人に襲われる直前に、縮小した<黄金の心>号をポケットに異次元でザーニウープに会って戻るや、次は宇宙の果てのレストラン<ミリウェイズ>へ。そこで盗んだ自爆直前の黒い船からテレポートすると、ビーブルブロックス、トリリアンは<黄金の心>号へ。ザーニウープを含む三人はこの宇宙を支配している男に会い、禅問答を繰り返す。一方、アーサー、フォードは別の船にてレポートし、結局200万年前の地球に降り立つ。
マーヴィンや、自己紹介するメインディッシュなど相変わらずの大ネタ小ネタで笑うものの、後半の展開がシリアスで読後感は前作と違った、一種爽やかなものでした。
脇役と思っていた元銀河帝国大統領ビーブルブロックスが今回の主役なのは意外。なんじゃかんじゃあるものの意外に賢い面をちらちら見せてくれ、作者の愛を感じます。たとえば宇宙を支配している男に会って興奮するザーニウープの前を「トリリアンの様子を見てきたほうがよさそうだ」とさらりと退出し、「この宇宙を支配してるのは、けっこうまともそうなやつじゃないか」。もっとも宇宙を支配している男の方も食えない輩で「宇宙の支配者は待てるだけ待った。船のエンジンがかかるかすかな音が聞こえると、それをごまかすために口を開いた」。すべて分かってやっているのである。素晴らしい。
ところで訳語が「無可能性フィールド」と「不可能性フィールド」で、ぶれているんだけどミスかな、オリジナルがそうなのかな。こういう判断、SFは難しい。