本の雑誌 4月号 (No.322) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「ご当地小説グランプリ!」。紹介担当の方の地域愛と知識がバラバラで、他県のおすすめ本が分からないので他人に尋ねるなんて…。編集部は地域色の欠片もないベイブレードでグランプリを決めるなんて…。企画自体に無理がないかい、と。読者のご当地本に漫画多いし。ちょっと残念な特集でした。
連載陣は好調。トヨザキ社長の『ブラッド・メリディアン』は他の書評よりも魅力と暴力を伝えてくれました。宮田珠己は定番『図説「最悪」の仕事の歴史』を『動物裁判』と絡めて中世のバカバカしさを、高野秀行はベストセラー『急に売れ始めるにはワケがある』からアメリカの懐の深さを、それぞれ読み取ります。風野春樹、柳下毅一郎が取り上げる、どこからそんな本を…という選択眼の良さも相変わらずいいです。めったくたガイドは金子のぶおの地図関連の紹介が面白い。あと北上次郎の万城目学の新刊『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』への絶賛やよし。大森望はお爺ちゃんとゼロ年代の組み合わせ、山崎まどかは中南米文学。本当にここらは手堅いです。
今号から「作家の言い分」として作家が自作の書評へコメントするコーナーが始まり、トップバッターは前号に続いて絲山秋子。でもこれ、ネタが前号と同じでちょっと残念です。でも 2号続けて批判された平田俊子が何と答えるのでしょうかね、あるいは無視するのか。次号は村上春樹あたりに青山南(何号連続だろう?)、古屋美登里が繰り広げる翻訳への批判に応えていただきたいところですが、無理だろうなぁ。
ディック・フランシス、ロバート・B・パーカーと続けて大物作家が失くなりましたが、個人的には翻訳家・浅倉久志さんの死去が大きかった…。私はどの日本人作家よりも多く、彼の日本語を読んでいる気がします。ちなみに『デコイの男』の訳者あとがき冒頭に本の雑誌と鏡明が出てきます。