本の雑誌 12月号 (No.330) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
今月号の最大の話題はウエちゃんも紹介しているとおり椎名編集人の勇退。既に「ぼくの知らない書き手のほうが増えてい」る状態なので、来月号から名実ともに浜本さんが編集人兼発行人になるようです。長い間、お疲れ様でした。「本の雑誌」の魂は確実に編集、読者、広告主に伝わっていますし、ヘンな話ですが経営的な危機や出版不況がより結びつきを強めました。安心して浜本さんらに任せ、そして時々は馬鹿話や不思議本を抱えて戻ってきて欲しいと思います。そして三橋曉、宇田川拓也、アライユキコ、金子のぶお、伊野尾宏之、石川春菜、池上冬樹、吉野仁、ゆきちゃんの連載が終了。まるでめったくたガイドを止めてしまいそうな勢いですが、浜本さんの先物買い能力に期待したいと思います。
特集は「活字で自活!」。読み物として面白かったですが全体的に後ろ向きな感じがするのは何故だろう。どこかに活字で自活なんて、今どき無理! と思う自分がいるからでしょうかね。ここらへんは穂村弘のセドリに対する感覚に似ているような。で、活字で自活している珍しい人、北上次郎の『抱影』に対する書評などを読むと、やはり格の違いを感じます。
個人的な今月号のベストはV林田が紹介する五條敏+沢本英二郎「無法者」からのカット(p/.71)。これだけインパクトのある絵は久しぶりに見ました。
高野秀行のサハラマラソンは難民キャンプや西サハラの現実を伝える少々落ち着いた回。報道と現実のギャップがあって面白い。個人的な経験(IMF危機中の韓国人や、天安門事件後の中国人と直接話した)からしても、結構こんなのはありですよね。全2回くらいかと思っていましたがまだまだ続きそうです。
円城塔によれば「世の中には三種類の人間がいる」。あとの一種類は何なのか気になります。
他に宮田珠己の『宗教で読む戦国時代』、渡邊十絲子の『日本語の哲学へ』、風野春樹の精神病院写真集 など。