妖怪大戦争

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妖怪大戦争 / 荒俣宏 / 角川文庫 / 590円
カバー写真提供: 角川映画

三池崇史監督の子供向け映画の原作、程度に軽く読み始めたところ意外や意外、帝都物語の外伝的な話で、これまで明瞭に語ってこられなかった加藤保憲の背景が分かりやすく描かれます。すなわち加藤らの一族は元々、日本の土着民であり、やがて入ってきたヤマト民族に虐げられて地獄に落ち、恨みだけで這い上がってきたもの、と(p306)。

一方本作の主人公たる「妖怪」は水木しげる的な解釈と言えばいいのか、人間と隣り合わせの世界に住む本来は何もしない人畜無害な輩で、大戦争とは一番遠い所に居るはずが、加藤の計略により恨みを吸った古い機械と合体させて人間を襲う武器として用立されます。
前半のタダシ少年と河童のやり取りや、溶鉱炉に落とされる妖怪など想像するだに恐ろしい映画になっていそうですが、後半にはもっと凄まじい妖怪たちの反撃、というのか質より量の妖怪大行進「盆踊り」が待っています。冒頭の妖怪地図も含め、荒俣宏はきっとこれをやりたかったのだろうけど唖然呆然です。

ラストは意外にもよく出来た展開。
肉欲の塊の愛情をぶつける瞬間は、すべてを受け入れる菩薩が取り込む姿とよく似ており、恨みだけで生きている加藤の弱点としてはうまく機能しているように思えます。

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